ロシアンシスターズ

□スパイ2
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ここで一気に時はさかのぼり…
-バレー半島、港前-
ロシアンの国旗を掲げた1隻の船が船着場に到着した。

「ひゅ〜〜〜〜〜う♪」

甲板の上ではポニーテールをした少女が目の前に広がる美しい街並みを楽しんでいた。
少女の名はミッチャ。
そう、ナーナとマキラーの妹、ロシアンシスターズの三女である。


「ミッチャさーーーん、ずいぶんご機嫌だね」


そう声をかけたのは1人の好青年。

マドカ=レイモンド。27歳。
現実世界でいえば日系アメリカ人のような風貌。
肩まで伸びた黒い髪に整った顔立ち。
ガタイのあるワイルドな男だった。

この男もさわちと同じくロシアンシスターズを支える影の1人だ。
さわちが3姉妹の教育サポートなら、マドカは実践サポート、といっていいだろう。

ただこの男がさわちと同じような経歴をもちながら決定的に違うのは、その生まれもった"怪しさ"だった。

マドカ=レイモンドはいつも笑みをこぼさない。
それがこの男の得体のしれないオーラをより強くかもしだしていた。

そしてそのオーラをいち早く感じとり警戒したのが二女のマキラーだった。

『あいつは絶対怪しい!』

これがマドカを見たときに発する彼女の口癖だった。
しかしナーナとミッチャに関してはそんなマドカのオーラを感じとれてないのか、それとも単にバカなだけなのか、素で仲良く接しているのもまた現状だった。

「それにしてもマドカさん…この島 独裁政治やってるような島にみえないッスねー。キレイな島じゃないっスか♪」
「ハハハ。まあ確かにそうだね〜」
「なんか遠征終わってすぐ帰るのもったいないな。姉さん達には悪いけど島満喫してから帰るのも悪くないかな♪」
「アハハ。だけどミッチャさーん、一見のどかな島に見えるけどねー、やっぱこの島は独裁国家だよー」
「そっスか〜?」

マドカは相変わらず怪しい笑みを浮かべながらスーツの内ポケットに手を入れると、
その中から数枚の写真を取り出しミッチャに渡した。

「?なんスかー、これ」

受け取った写真を見ると、

「げ」

ミッチャの顔色はたちまち蒼白になった。

写真にはバレー半島全体が写し出されていたわけだが………
とても目を疑ってしまう光景だった。

それもそのはず。
島全体が「ゴワンズ」とアルファベットで形づくられていたからだ。
恐らく上空から見なければ気付かないだろう。

「なんスか…この写真…」

「ハハハ、島の上空からとった写真さ」
「この島!!最初っからこの形………なワケないっスねー?」
「ハハハまっさかー♪」
「じゃあ…もしかして島を……削った?!」
「ピンポーン♪」
「えええ?!!」
「初代ゴワンズの代からずーっと500年近くかけて島全体を改築したとか、アッハハー笑っちゃうねー」

「500年!!?」

「ずいぶん多額の金をつぎこんだみたいだよ」
「はァ?!そんなんに金使うんなら市民の為に金使えって話っスね!」
「ハハハ、この際バレー半島じゃなくてゴワンズ半島に改名しちゃえばいーのにねー♪」

「そもそも今までぜんっぜん気付かなかったスよ!!」

「まあ小さな島だからねー地図でも見つけづらいってのもあるけど今まで気付かなかったってのもすごいと思うよー♪」
「ハハ。やっぱそうスか?」

「てゆーわけで俺達は今ここにいるよ〜♪」

マドカは持っていた地図を広げると、ゴワンズと形造られた"ワ"にあたる島を指さした。

「ここね…」
「そう♪そしてこの島の中心部"モウドーク"にゴワンズ卿がいるんだ。そこが彼の政治拠点になるよ」
「なるほどね…」

「それじゃあミッチャさん!!今回の任務『モウドークでのゴワンズ卿情報収集』よろしくねー。
俺達サポート班はこの近くのレシーブってホテルで待機してるから。
もちろん君の任務が終わるまでね」

「はーい」
「じゃ!任務遂行よろしくー。くれぐれも深追いはしちゃダメだよー」

ミッチャは返事の変わりにガッツポーズを返すと、荷物を持ちいち早く船から降りたった。

「さて・と!任務遂行といこっかな♪」

そう意気込むミッチャの顔はとても楽しそうだった。


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