ロシアンシスターズ
□スパイ1
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古い石造りの家が建ち並ぶ表通り。
-ロシアンタウン-
この町の外れにムワンブイ家というある3姉妹が住んでいた。
長女、ナーナ
二女、マキラー
三女、ミッチャ
彼女達の紹介は…いや後にしよう。
「姉貴ーーーーー!!!」
ドン!!
大きく石ドアを蹴って入ってきたのは3姉妹の二女マキラー。
「?どうかした?」
カップスープを飲みながら振り向きざまそう答えたのは3姉妹の長女、と同時にこのくだらないストーリーの主人公ナーナだ。
「どうしただって…?!あんた今何飲んでる!!」
「パンプキンスープ」
「誰のだ!!」
「君の」
「けろっとした顔で即答してんじゃねー!!!」
「じゃあどんな顔で答えればいい?
き み の パ ン ピュ キ ン ス ー ピュ ?」
誰が見ても腹の立つ憎たらしい顔を浮かべながらスープを飲み続ける姉の姿にマキラーの怒りは頂点にあがった。
「姉貴!!こんっどという今度は許さねえ!!」
「…!!」
そう言って懐から鎖鎌をとりだすとソファの上のナーナめがけて打ってきた。
「遅いよ!!!」
余裕たっぷりの顔でマキラーの攻撃をサッと交わす…
とはいかず、鎖鎌の柄尻はおもいきりナーナの頭上に落ちてきた。
「いったーーーー!!!」
あまりにも強い衝撃にソファの上で飛び跳ねる。
「激痛い!!激痛いって!!!」
「ふん!私のパンプキンスープを奪った罪は重い」
ナーナの手から解放され空中に舞い上がったパンプキンスープのカップをしっかりキャッチしたマキラーはそのまま残りのスープをゴクゴクと飲み干した。
「マキラー……あんた…鎖鎌の腕あがったんだね」
「稽古さぼっている姉貴とは違う。それだけだ」
「まさか実の姉に本気で攻撃してくるとは…」
「素早さはあんたのお得意だろう?ちゃんと交わせなかった姉貴が悪い」
「だってだって!あんたのスープ飲んでたんだから仕方ないじゃん!!」
「そこが問題だ!!」
そこまで言われるとナーナとしてもどうも言い返せなくなった。
「ケンカはそこまでにしてください」
突然2人の間に割って入る男の声。
「誰だ!」
マキラーは再び鎖鎌を構えキツくドアの方を睨んだ。
「僕です」
そこには端正な顔立ちの少年が1人立っていた。
手にはたくさんの厚い本を抱えている。
「なんだ…"さわち"か」
マキラーは構えをとくと持っていた鎖鎌を袖にしまいソファの上にドスンと座った。
「ちぇ〜〜〜。さわちが来たってことはイコール授業かぁ…」
面白くなさそうにナーナが呟く。
「安心してください。頭の悪いあなた達のためにも今日は分かりやすく授業をします」
「え?!ホント!!!」
「おまえは1言多いんだよ!!!」
マキラーはすかさず突っ込む。
もちろんさわちの"頭の悪いあなた達"発言に。
「実際本当の事でしょう」
さわちは淡々とした口調で机に厚い本を置くとチョークを手にし文字を書き始めた。
「ゴワンズ卿」
チョークで書かれた黒板の文字を見て、
「この人が何?」
と、ナーナが口を開いた。
「ナーナさん、この人が誰か分かりませんか?」
「え?……セレブ?」
ナーナの言葉にさわちはがっくりと肩を落とした。
「あれ?あ、そっか男か!!」
「バカ姉貴」
突如口を挟んだのはふてぶてしそうにナーナをみつめるマキラーだった。
「ゴワンズって…今回妹のスパイ遠征のターゲットだろ?」
そこまで言うとさわちは軽くうなずき、
「そうです。さすがにこれに関してはバカなあなたでも分かりましたか」
「バカで悪かったな」
「褒めてるんです。喜んでください」
さわちは再びナーナのほうを見ると、
「とりあえず妹さんの遠征相手の名前くらい覚えておいてくださいね」
と付け足すように言った。
「はいはい、分かったよ。ゴブリンね」
「ゴワンズです」
さて「スパイ」というぶっそうな言葉も出てきたところで、彼女達3姉妹について話すことにしよう。
このナーナ、マキラーそしてまだこの場にはいないミッチャ。
年齢は上から19、18、17歳、と一見普通の学生。
しかし職業は「スパイ」であった。