愛し愛され 、恋焦がれ
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『 魔導士様!助けて下さい!!』
漠然とした依頼だった。
だけど俺は何から救えと言うのか尋ねる事なくその依頼を引き受けた。
それが何故なのかは10年の月日が経った今でも分からない。
その子の涙は宝石の様に美しく、そして脆く地面に落ちた。
『 僕の質問の正解を答えてくれたのは魔導士様が初めてです。』
涙を拭いながら安堵の様子を露わにし笑む少女を俺は優しく抱き締めた。
名をネルという少女。
俺はこの子がここまで必死に懇願する願いを叶えてやる事にした。
『 魔導士様、月が真上に上がる時、街の外れにある森の中の洞窟へ来て下さい。』
ギ「 随分とアバウトな道案内だな。」
『 大丈夫です。迷う事はありません。』
不思議な少女だった。
それと共に謎多き少女でもある。
服装や装飾品から察するに貴族…恐らく先の王の娘。
しかし、王には似ても似つかぬ風貌。
王は金髪に赤みを帯びた瞳…。
少女は薄紫の髪に蒼い瞳…。
金に紫、赤に蒼…補色だ。
通常ではあり得ない。
概ね、養子と言ったところか。
ギ「 約束しよう。今夜、月が真上に上がる頃、洞窟に必ず向かう。」
『 お待ちしています。』
少女はそれだけ告げると部屋を後にした。
…ったく、我ながら……
ギ「 やべぇ、案件に手ぇ出しちまったかね。」