徒然なるままに

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*****






「———この里は…に比べて…だから」



ん、誰…



「アカネは… だから…」



懐かしい声



「ボクは独りぼっち—————だから」



独り…?



「だから… 嫌だ… 」




何が嫌なんだろう




思い出せない
とても大切なことなのに


—————この子は… 誰…





「ボクはこの里からアカネが出ていくなんて嫌だ!…また独りになっちゃう!」

「お願い…行かないと言って アカネ…」





——————我愛羅…





そうだあたし…
あの子を置いて木の葉に帰ってきたんだ
独りできっと寂しがっているんじゃないかな…



元気… かな…




*****





何故か覚えていないが…
あたしは過去に砂隠れの里にしばらく住んでいたことがある



確か風影様に会って「私の子だ」と紹介されたのが我愛羅だった
額に愛を抱え、冷たい目をした男の子だった





「あたしアカネ。藤宮アカネっていうの。よろしくね!」
「…」




バシッと砂であたしは手を払われた



「どうせお前も…他の奴らと同じ…」
「…?」




何もしていないのに睨まれ、攻撃された
あたしの手には痛みを通じて彼の悲しみと孤独な感情が伝わってきた



風影様は我愛羅に注意すると、あたしに謝ってきた




「すまないね…この子は感情のコントロールが上手くないんだ」
「いえ、大丈夫です。しばらく二人にさせて頂けますか?」
「…もちろん」





パタン…





大人たちは消え狭い空間にあたしと我愛羅くんは2人になった






「…」
「…」



「ねぇ我愛羅君は砂を操れるの?」
「…」


小さくコクリと頷く



「すごいね!砂って気持ちいいよね!
あたし砂で遊ぶの大好きだよ!」
「…!」
「砂って色々作れるから楽しいよね!山に家にお城に…そこまで上手に作れないんだけどね」
「…砂が…好き?」
「うん!」
「この砂が…?」
「もちろん!!」





すると我愛羅君は砂を空中に集め浮かせた
サラサラ…とゆっくり砂が落ち中から砂のバラが出てきた






「わぁー!すごい!こんなこともできるんだね!」
「…うん」


「これ、アカネにあげる」
「え?いいの?」
「うん、また作ればいいから」
「ありがとう!我愛羅君!」




ハグっと抱き付こうとすると砂にはばかれた







「???」
「…ごめん、まだアカネのこと信用できない」
「んーそうかー…いいよ!
まだ会ったばかりだもん。警戒して当たり前だよ
急に抱きついてごめんね 不安にさせちゃったね」





ヨシヨシと頭をなでるとゆっくり顔を上げる我愛羅君






「ボ、ボクのこと…嫌いじゃないの???」
「どうして嫌うの?嫌いになる理由なんてないよ!もっと仲良くなりたいな!」
「仲良く…」




すると我愛羅君が手を差し伸ばしてきた





「…」
「…?…握手?」
「…うん、さっきはごめんね」
「ううん!大丈夫!気にしてない!改めてよろしくね!」






我愛羅君の頬が少し赤くなった気がした
あたしたちはしっかり握手をする







「…この砂は奪うことしかできないと思っていた」
「…?」
「水、乾き…人の命も愛情も何もかもボクから奪っていくんだって」
「我愛羅君はこの砂が嫌いなの?」
「…」
「あたしは好きだよ?さっきみたいに砂のバラだって作れるし…あたしを喜ばせてくれたじゃない」
「!」



「そう、だからこの力に怯えないで。とても素晴らしい力だと思う」
「…ありがとう」





すると我愛羅君はあたしをぎゅっと抱きしめてきた





「アカネ…温かい」
「我愛羅君も温かいよ」





まるで我愛羅君は心の底から愛情に飢えているみたいだった






「ずっとずっと寂しかった…誰も、ボクを受け入れてはくれなかった」
「寂しかったね、つらかったんだね」




—————うわぁぁっぁあぁぁぁ





我愛羅君は泣いた
大声で泣いた




「!」



まるで砂が我愛羅君を守るように覆い被さった








—————この子は感情のコントロールが上手くできないんだ









風影様の言葉が頭をよぎる



だからってこの子から離れるわけにはいかない———!





あたしは意地でも離れるものかと我愛羅君にしがみつく

砂は抵抗するようにあたしを攻撃してくる

痛く冷たい砂が肌を削るかのように全身へ流れていく



痛い 痛いよ でも…




もっと心が痛くて苦しいのは我愛羅君だ!!!




「我愛羅君 大丈夫 あたしが守るから
君はもう一人にしないから…!」
「…————!」




ぎゅううっと抱きしめた
殺されるという感情はなかった





「アカネ…」
「どうしたの?」
「ボ、ボク…」
「大丈夫だよ」

「アカネ…血が…」
「大丈夫 たいしたことないよ」
「ケガ…してる」
「我愛羅君ほど痛くないよ」
「ご、ごめん…なさい」
「大丈夫 我愛羅君」




——————大好きだよ



そう言ってあたしは意識を失った






*****








—————————風影邸にて






「慈愛に満ちた藤宮の血が冷徹な我愛羅の心を溶かしたか」
「はい、風影様」

「彼女の最大の期限はいつだ?」
「半年までの契約です」

「…それまでにアイツの残虐性が低下するといいが…」
「しかし、半年後の別れる際、我愛羅様の心理状態も心配です」

「それまでに人の心を取り戻してくれればいい
それより私は藤宮が殺されるに賭けていたんだかな」
「風影様!…それでは木の葉と深い溝が出来てしまいます!」

「ははは、冗談だ。しばらくしたらテマリとカンクロウにも会わせてやれ
彼女は最大限活用するんだ」







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