徒然なるままに

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「間に合った…!」
「アウトだ」



――――――ゴンッ!!



遅刻は免れたと思い教室に飛び込んだものの、どうやらダメだったらしい


イルカ先生から愛の拳骨を食らってしまった

女の子だからって手加減してくれないんですね…




「まあいい、アカネはそこで正座して話を聞いてなさい。
今日の演習は隣のクラスと合同で『かくれんぼ』をする」

「先生ツッコミどころがあり過ぎて困ります」

「いいから黙って聞きけ!質問は後で受け付けるから」
「イルカ先生のどS♡」

「(スルー)かくれんぼとは言ったが、ただのかくれんぼではない。
鬼は先生たちが行う。開始15分以内に見つかったものは追加で補習授業に参加することになるから…みんな本気で隠れる様に!
忍びたるもの静かに身をひそめ、外敵から逃げることも大切だからな」




クラス中から「ええー!?先生が相手じゃ敵いっこないよォ!」「無理ゲー!!」と大ブーイングの嵐が巻き起こるも、イルカ先生は一蹴した




「こんな事も出来ずに一人前の忍びとして一つの任務をこなしていくことなんかできないぞー?
…それでは、30分後に演習場に集合!特にアカネは遅刻しない様に!」

「あらやだ//// イルカ先生ったらアカネ思いなのね…って聞けよ!!」



私を全スルーして教室を出ていくイルカ先生の背中が見えた




「全くー、イルカ先生ったら冷たいんだからー」
「いつもあんな絡み方されちゃー、イルカ先生も可哀想ってもんだぜ」


聞き覚えのある気だるそうな声…



「シ、シカマル…」
「それにしても、アカネも懲りねぇよなぁ」



正座している私の視線に合わせてしゃがみ込んで来るシカマル


―――――バッチリ目が合ってしまった。



『アカネはァ…オレの女だって言ってんだろ、わかったかてめーらぁぁっぁあ!!!!』





「ぎゃぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!」
「!?」ビクッ

「おおおおおはようございます!シカマル先輩!」



ずさささささーっと後退りする私。
もうマッハだよ、マッハ
なんか床から煙が出るほどの勢い




「はぁ?お前何言ってんの?」
「あ、あいさつはコミュニケーションの第一歩でありますが故…」
「意味わかねーし、頭大丈夫か?」
「朝ごはんはしっかり食べてきました!」
「…(全く会話になってねーし)
…顔赤いぞ?熱でもあるんじゃねーのか?」



シカマルの手のひらが、私の額にそっと触れた




「ッ!!!!!!?」
「んー、あんまり変わんねぇか。アカネ、お前朝から拾い食いでもしてきたんじゃ…」
「おおおおおはようございましたぁぁぁぁ!失礼しますゥゥゥゥ!」
「はァ!?何言って…」



ダメだ!シカマルの顔を直視できない!
あんな事あっても、普通に接そうと決めてたけど…
やっぱり無理ィィィィィィ!!!




思わず私は鞄を放置したまま教室を飛び出した




******
※シカマル視点




「何だよ、やっぱり変なもん食べてるんじゃねーか」



それにあの慌てよう、異常すぎるだろ…




「ちょっとぉぉぉぉぉ!!何してくれてんのよォ!バカマルうううう!」
「あでッ!!!」


思いっきり殴られた



「い、いの…それはちょっとやり過ぎだよ」
「チョウジは黙ってなさい!この乙女心のわからないバカマルには、乙女代表☆山中いのの正義の鉄拳が必要なのよ!!!」



何燃えてるんだ、いのの奴…




「落ち着けよ!いの!オレがアカネに何したって言うんだよ!?」
「そーだよ!シカマルがアカネちゃんに悪い事するなんて考えられないよ!」



2対1
明らかに分が悪いのに
いのは収まる気配なし。




「アンタねぇ!この間の食事会のこと憶えてないの!?」
「食事会?…猪鹿蝶会の事か」



アカネが忘れて行った鞄を机の定位置に置きながら考える
…どうやら答えが出るまで解放してはくれないらしい




「アカネ怒ってんのか?」
「そーよ!きっとそう!」
「オレがいきなり猪鹿蝶会に連れて行ったから…」
「違うわ!ボケェ!!」



パァンッ!と乾いた音が響く
怒りの鉄拳二発目。
くっそ頭痛ぇし…




「連れて行って…えーっと」
「ボクが食べ過ぎてダウンして…」
「あー。そんな事あったっけ?オレその辺から記憶がねぇんだよなァ…気付いたら頭重てぇし、身体熱いし…なんか親父はニヤニヤしてるし」
「アンタ、もしかして…」

「風邪ひいたと思ってたんだけど、親父からもらった薬でようやく本調子に戻ったって感じなんだよなァ…」
「…(もしかして本気で憶えてないとか)」




今度は「ううーん」と腕組みして考え始めるいの。




「ま、まぁいいわ!憶えてないのは仕方ないし(それに酔ってたし…)!!
…でも、このことは私の口からとても言えないから直接アカネに聞いて謝りなさい!」



そしてずびしぃっとオレを人差し指で指すいの。
…本当、女ってやつはコロコロと感情が変わって忙しいやつだな…




これ以上いのに聞いても教えてくれそうにもないので、オレは直接アカネに聞くことにした。




*****




「し…死ぬかと思った…」



私は一足早く演習場についた
いくら『かくれんぼ』といえど,先生たちが相手じゃ敵いっこない
つまり戦地の偵察も兼ねているのだ





…だが、先ほどのシカマル事件が頭の中をグルグルと駆け巡り、隠れ場所探しに集中できない






あぁー!落ち着け!あたし!

深呼吸だ、深呼吸…
えーっと、ひっひっふぅ〜…








「ラマーズ法かよ」
「ひっひっふぅ〜…、あれ、深呼吸ってどうするんだっけ?」
「ワン!」



ずしっとした重みを頭に感じる



「あ、あなたは…」
「よぉ!久しぶりだな!アカネ!」
「命の恩犬!救世主犬様〜!」
「ワン!」
「赤丸にかよ!?」



赤丸を抱っこして頬擦りする
うわぁ…このもふもふ感たまらん!♡



「…ったく、ピッキングヒーローはシカトかよ」
「犯罪をそんなに偉そうに言う人と関わらないようにって言われているんで」
「どんな塩対応!?オレが来なかったらずーっと閉じ込められてたままだったんだぞ!?」



「あっははー!冗談!」なんて笑いながら「あの時はありがとう。本当に助かったよ」とお礼を言う



「ったく、久しぶりに会えたのにそんな対応されるだなんて思ってなかったぜ」
「くぅ〜ん」
「ごめんってばー…、そんなに拗ねないの」






赤丸にヨシヨシするように、キバにもヨシヨシとしてあげた






「ッ…!」
「あ、大人しくなった。キバってワンコみたいだねー」
「ば、ばかッ!よせ!」
「照れちゃってかわいいー」
「照れてねーよ!」



頬を赤く染めるキバも可愛いもんだ
あ、そうだ。ここは悪ノリで…



「お手!」
「わん!」
「!」

「…」
「…」



あたしの手の平には赤丸の肉球と、しっかりしたキバの手



「…」
「こ、これは誤解だ!…あの、だな…」
「やっぱ、キバってわんこじゃん」
「…」




今度首輪でも買ってきてあげような…






「あ、…キバくんに…アカネちゃん」



か細い女の子の声が聞こえた



「ヒナタちゃぁぁぁん!久しぶり!元気にしてた?」
「あ、…ううん…、その…邪魔してゴメンね…」
「「え」」



よく見ればキバと手を取り合ったままだった




…あッ。。。




「ヒナタちゃんんんんん!これは誤解だよぉぉぉぉぉ!」
「そそそそそそうだぞ!ヒナタ!決してアカネなんかに、お手なんかしてない!!」
「キバ!余計なこと言うんじゃないの!もっと変に思われちゃうでしょ!?」



いや、事実だけど。




2人でぎゃあぎゃあと言い合っていると、ヒナタちゃんから鶴の一声が。






「アカネちゃん、あの…この間はありがとう…」





え?





「ヒ、ヒナタちゃん?」
「??」
「な…何もできなかった私を…守ってくれて」
「で、でも…」
「あ、あの時のアカネは、その。怖かったけど…あの人たちのほうがもっと怖かった…。
で、でもアカネちゃんは私を守ってくれたから…だから、嬉しかったの…」



普段おとなしいヒナタちゃんが、こんなにも言ってくれるなんて…





「だ、だから、その…ありがとう…
これからも仲良くしたいな…って…」

「ヒナタちゃんんんんん!こちらこそだよォォォォ!」




思わず私はヒナタちゃんにダイブ&ハグ
可愛い、可愛い過ぎるよ…ヒナタちゃん…




「んー?…、まぁ、なんつーか。二人とも仲直りできて良かったんじゃねーか!なぁ!赤丸!」
「ワン!」
「ケンカしてないし!」
「ワン!」




勘違いキバにツッコミを入れて、ギャアギャア盛り上がる私たちをヒナタちゃんは微笑んで見ていた




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