徒然なるままに

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「あんた達が忍びになれるわけないじゃない」
「一生、アカデミー生よ」
「落ちこぼれちゃん」




すぐにヒナタちゃんの笑顔がなくなった
…何、こいつ等。




「何か用ですか?」
「フン、友情ごっこは楽しい?」
「あんた、ウザいのよ」
「転校してきたからって調子に乗んな」
「このブスが」





あー、またこのパターンか。
全く会話ができません






「だから何の用かって聞いているんですよ。君たちを相手にするほど、私は暇じゃないんです」

「なによ!」
「ふざけんな!」
「そんな事言えるのは今のうちよ!」




もう溜め息しか出ない
呆れた。
サスケがいないから大丈夫だろうと思っていた私の考えがバカだった。






「あー、はいはい。わかりましたー。
…行こう、ヒナタちゃん」
「う…うん…」





大人の女性的対応。
ここでケンカすればヒナタちゃんが嫌な思いをする
とりあえず、まずは彼女を安全な場所へ連れて行かないと



ヒナタちゃんは採集した花々を抱え立ち上がる






「ちょっと!藤宮さん聞いてるの!?」
「あー、聞いてる聞いてる」

「嘘つくんじゃないわよ!!」
「聞こえる聞こえる」
「聞いてないじゃない!!」





ヒナタちゃんが心配そうに
「アカネちゃん…、大丈夫なの?」
と聞いてきた





「大丈夫だよ、ヒナタちゃん。私が守るから」






私とヒナタちゃんが歩き出すと、怒りに満ちた女が私の肩を掴んできた。





「いい加減にしなさいよ!!」
「何をですか?」

「その態度よ!」
「アカネ…ちゃんッ…!」

「アンタも!!」
「きゃッ!」







ばさッ…





女がヒナタちゃんの肩を突き飛ばした

その拍子に彼女の持っていた花々は無残にもバラバラに地面へと落下した。



そしてヒナタちゃんも、花畑の中に押しやられ、バランスを崩して倒れた






―――私はそこから記憶がない









******
※ヒナタ視点





アカネちゃんが…
ちょっと怖い女の子たちに絡まれた


私はアカネちゃんを助けたいって…思った、けど。
怖くて…何もできなかった




この不安はアカネちゃんに伝わっちゃったんだと思う
…その場を離れる時、アカネちゃんは「大丈夫だよ。ヒナタちゃん。私が守るから」と言ってくれた




とても力強いその言葉に私は安堵した。
やっぱり、アカネちゃんって強いんだなって、改めて思った…





私どうしていいか…わからなくて…。
アカネちゃんの名前を呼ぶとその子に突き飛ばされてしまって…




花も落としちゃったし…
地面にも倒れてしまった…




…やっぱり、私…ダメ…なのかな…
アカネちゃんの足…引っ張ってない…かな…




「痛…」

立ち上がろうとした時…、右足首に激痛が走る



足を見てみれば赤く腫れていた。
…足、挫いちゃったみたい…


どうしよう…また…アカネちゃんに心配、かけちゃう…

…それより、アカネちゃんは大丈夫…かな。




なるべく足を動かさないで、少し、前に進んでみると花々で見えなかったアカネちゃんが見えた





「フン、大人しくなちゃって」
「びびっちゃったのかなー」
「藤宮さんて大したことないのね」



そういって彼女たちはアカネちゃんを挑発していた




違うもん…、アカネちゃんは…そんな人じゃない、もん…





ふとアカネちゃんを見れば、うつむいていた




やっぱり…アカネちゃんも怖い…のかな…。
そう思っても、私の身体は震えて動けなかった







「日向さんを追いやられて、そんなに悲しかったのかしら」
「へぇ〜、そおなんだ」
「初めてできた、友達だもんねェ…」
「それなら、簡単ね」




そう言うと、今までアカネちゃんを囲んでいた女の子たちが私の方に向かってきた






こ、怖い…



自分でも、身体がガタガタ震えているのがわかった
でも、動けなかった…



来ない…で…ッ






私の思いは届かず。
その子たちは私を囲んだ




「うわ、震えてるよ、この子」
「怯えてんじゃん」
「よっぽど、あたしらが怖かったのかしらー?」





そして、無理やり立たされた



「ッ―――!」

「何この子」
「怪我してんじゃん」
「はははッ、超ダッサーイ」




彼女たちは笑った。





本当…私って、無様。
何も…できないし…
ドジだし…

ただ、震えることしか出来ない。




臆病者…




ただ、ただ悔しくて、涙が出てきた。
泣いちゃダメ…泣いちゃ…



そう思っても、一度出た涙は止まらなくて。
余計にその子たちを煽ってしまった






「藤宮さ〜ん!助けに来なくていいの〜?」
「日向さん泣いちゃってるわよ」
「可哀想に。藤宮さんに見捨てられちゃったわね」





違うもん…アカネちゃんに…そんな事、言わないで…。










――――直後。






彼女らの肩に花が茎ごと刺さった。
まるでクナイのように




そして彼女たちは風圧で後ろに飛んでいく。




アカネちゃんの方を向けば、先程私が落した花々を抱えていた






――――でも。





いつものキレイな黒髪じゃなくて
燃えるように真っ赤な紅髪だった





…アカネちゃん…?






数メートル飛ばされた彼女たちは何が起きたかわからないという顔をしていた


私もハッキリとはわからないけど。
きっとアカネちゃんがやった…んだと思う




アカネちゃんは花を一本手に持って、彼女らに投げた。



…けど、早すぎて見えなかった。




カツン…と大きな音を立て、その花は木に刺さる


「!」



そして木は見る見るうちに緑をなくし、枯れてしまった。
刺さった花は根を張り、その木を養分に大量に繁殖して1本の木に花がとぐろを巻くように咲いていく






こ、…これって…




「きゃあぁぁああ!!」



女の子が悲鳴をあげた。
彼女を見ると肩に刺さった花が心臓の鼓動と同じ様にドクンドクンと少しずつ大きくなっていく




「やッ…やだぁぁ!!」
「死にたくない!」
「助けてよッ…」




死を目の当たりにしているのか。
その子らの顔は青ざめていく




アカネちゃんはゆっくり彼女たちに近づく。
一歩…一歩…と。





「や…やめて…藤宮さん…」
「私たちを殺さないで…」
「お願い!何でもする!」
「謝るから…」




泣きながら懇願する




でも…その声はアカネちゃんには届いてなくて…





アカネちゃんは右手を水平に伸ばした
そして、開かれた指を小指から薬指…と、ゆっくり閉じてく




「あ…あぐッ…」
「ゲホ…」




吐血。




こ、このままじゃ…







「ちょっと!何してんのよ!!アンタ!!」






突然現れた少女に、アカネちゃんはビンタをされた


その反動なのか、女の子たちは「ふぁッ!!」と一気に息を吸い込む



…息、出来なかったんだ…。






「い、いのちゃん…」
「これ!どーゆー事なのよ!?あの花は人の命を奪うような花じゃないわよ!」



助けに来たいのちゃんも動揺しているようだった





打たれたアカネちゃんは頬を抑え、顔をあげる



――――朱色の紅い瞳。





いつものアカネちゃんじゃないッ…!!




全身に悪寒が旋律した




アカネちゃんは手元にある花を一本取った





――――!…このままじゃ、いのちゃんが!





「ダメッ!!」
「「「「「!」」」」」




私も驚くくらい大きな声が出た




「アカネちゃん!…私は…もう、大丈夫…だからッ!お願いッ」




一瞬だけど、アカネちゃんの動きが止まった




「う…ッ、うう…」

頭を抑えてしゃがみ込むアカネちゃん


「…ヒナ、タ…ちゃん…?」
「アカネちゃん!」




少しだけ、いつものアカネちゃんに戻ったのがわかった





よかった…!




そう思ったのも束の間で。

アカネちゃんは抱えていた花束を私の方に投げた。






え。

私、死んじゃうのかな…





―――その刹那。





あたたかい温もりが私を包む




「大丈夫!?日向さん?!」
「せ…、先生…」



私は女性教師に助けてもらったみたいだった…



アカネちゃんの方を見れば、お面をつけた人達に抱えられ、気絶しているみたいだった。



――――髪は、黒かった。




「い、いのちゃん大丈夫?!」
「サクラったらッ、遅いのよー!…でもありがとうね、助かったわ」





…そっか。


助けはサクラちゃんが呼んできてくれたんだ…



…よかった。
誰も死ななかったんだ…




緊張の糸が、切れた、気がした。











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