徒然なるままに

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※シカマル視点




「…で、遅刻した理由ってなんだよ?」

「だーかーらー。認知症のおじいちゃんを自宅に連れて行ってあげてたの!
もうさ、行くとこ行くとこ『これはワシの家じゃ!』ってゆーからさ、一軒一軒回ってさ、時間かかっちゃったわけ」






さっきからこの状態。
んな話し、信じるわけねぇだろ







昼休みになって、アカネが教室に来た。
大遅刻してきて「シカマルお弁当持ってきたよ」が第一声だった




しかも遅刻の理由が意味不明だし







「遅刻の割には眠たそーだし、なんでそんなに服が汚れてるんだよ」
「あッ…いやー、ついでにそのじいちゃんの家の掃除してきたから…」

「ふーん」
「あー!信じてないなー!?」

「じゃ今度、そのじいさんの家に連れて行ってくれよ」
「あー…、うん…、家どこだか忘れちゃったんだよねぇ…アハ、アハハハ…」




声が笑ってねぇよ、バカ
嘘バレバレだってーの



まぁ、本人はこう言い張ってんだから、これ以上つっこまなくてもいいかな

適当に「へぇー」っと流しておく






「シカマル!一緒に昼ごはん食べようよ!」
「お、チョウジ。んじゃあ、行くか」




立ち上がればジッっと、アカネがオレを見てきた


あぁ、そうか







「アカネもくるか?」
「え?…いいの?」
「弁当あるんだろ?」
「うん!行く!」









花が咲いたように笑うアカネに心臓がドキッと高鳴るのがわかった




あぁ〜、オレってこういうアカネの顔見たかったんだよな






******
※アカネ視点








「へぇー!アカデミーの近くにこんなにいい場所があったんだー!?」
「あァ、ここはオレの特等席だからな」




屋根付きだし、大きくて平らなベンチがあるし



建物の屋上だし、人目も気にならないし、風も気持ちいい
これはゆっくりくつろげる


シカマルらしい特等席だ









「…でもさァ、シカマル。今日本当にお弁当忘れてきたの?」
「ん…まぁな」





現在シカマルは私のお弁当を食べている




チョウジ君はいつもお菓子を食べているのにお弁当箱が結構大きくてビックリした







「チョウジ君、たくさん食べるんだねぇ」
「まぁね!今日は特別にもう一個お弁当があるからね!」
「特別…?」
「バカッ、余計な事ッ」
「?」






どういう事だろう?
今日は3人で食べるから特別なのかな?
それとも、もう一つの弁当箱にはフルーツでも入っているのかな?







「やっぱり食事はみんなで食べると美味しいね!」
「何だよ?お前いつも一人なのか?」
「うん。一人暮らしだからね」

「そおなんだ!アカネちゃん、よかったらお昼はここにおいでよ!」
「え?いいの?」
「アカネちゃんとごはん食べるとボク達も楽しいし!いいよね!シカマル!」
「あ、…あァ」







これは嬉しいお誘い。







「ありがとう。毎日お昼が楽しみになったよ!」
「よかったな」
「でも、無理はしなくていいからね!アカネちゃんが来れそうな時で大丈夫だから!」





チョウジ君いい人すぎる…
アカネちゃん感動だよ







「ねぇーシカマル」
「な、なんだよ」

「お味はいかが?」
「まぁ、いいんじゃねぇの?」
「うわ、微妙なお返事。お口に合わなかったのかなー?」

「いや、そーじゃなくてよ。なんで弁当にサバの味噌煮が入ってんだよ。普通あんまり入れるもんじゃねぇだろ」
「あー…それは…、」








言えない。
昨日チョウジ君にシカマルの好物を聞いていたなんて言えない







「ま、まぁ…家に偶然サバがあったから昨日晩御飯に作ったんだけど…余っちゃったから…さァ」
「へぇー」
「…(アカネちゃん、嘘が下手過ぎるよ)」
「チョウジ君の分もあるんだ!よかったらどうぞ〜!」
「ほんとにィー!?やったー!!ありがとうアカネちゃん!」








別に包んできていたお弁当箱をチョウジ君に渡す
…よかった。余るくらい作ってきてて…






「んー!美味しい!!…アカネちゃん料理上手だねぇ」
「そんなことないよー。初めて作ったから本と睨めっこだったんだよー」

「味噌が染みて冷めてても美味しいし、すごくご飯と合うよ!」
「チョウジ君グルメリポーターみたい!そんなに喜んでくれると嬉しいなぁ…また作ってくるね」
「わーい!楽しみにしてるからね!」







自分が作った料理でこんなに喜んでもらえるとは。やりがいがあるなぁ
…本当、チョウジ君の分も作ってて良かった





「……」
「何?シカマル」
「…オレもアカネの作ったサバの味噌煮、美味いと思うぜ」

「本気で思ってるー?笑」
「うるせーな。こーゆーの苦手なんだよ」
「シカマルは美味しいものは静かに食べるもんね」
「…そうなの?」
「だァー!!も。…まァ、良い嫁さんになれるんじゃねぇの?」





…それって。
褒めてくれてるんだよね?





「えへへ…」
「な、なんだよ」
「んー…なーにもッ」

「ニヤニヤしてる奴なんか誰も貰ってくれねぇよ」
「フフフ…」
「んな!さっきと言ってること違うじゃない!チョ、チョウジ君まで…」
「あーもう。わかったわかった。誰も貰ってくんねー時はオレが貰ってやるから」






「えッ…」
「…」
「な、なんだよッ」








「いいもん!シカマルのバカ!私、絶対余りものにはならないから!!」
「んなッ!!」
「…(シカマル、遠回しに言ったのが逆効果だったみたいだね)」





呆れるシカマルに、拗ねる私。


いいもん。私、イタチさんみたいな優しいお兄様と結婚するもん。




シカマルのバカ、バカマル。←





「ったく、いい加減気付けよ、このバカ」
「いたッ!」






おでこにデコピンされた。







「もういい、オレは寝る」
「はァ!?」
「シカマルは寝ることが好きだからね」




ドサッと大の字に転がるシカマル。
…なんか不貞寝ってこういうことを言うんだろうなとなんとなく思ってしまった。






「本気で寝てるのかな」
「シカマルは狸寝入りなんてできないよ。寝ることが趣味だからね」
「でも、そんなに早k「すー…すー…」」





アレ、寝息…?



顔を覗けば幸せそうに寝ているシカマル


…アンタの寝つきの早さはの●太君に匹敵するよ…








「アカネちゃん、実はね」
「どうしたの?チョウジ君」
「シカマルは弁当忘れてなかったんだよ」
「ええぇッー「しーッ!」あ…」




思わず大きな声を出してしまった
チョウジ君に注意されてシカマルの様子をうかがうが…起きてなかった



先程と同じ寝息が聞こえる

危ない危ない、気をつけなきゃ…







「…シカマルは自分のお弁当をボクにくれたんだよ。
よっぽどアカネちゃんのお弁当が食べたかったんだね」



よく見れば、チョウジ君のもう一つのお弁当箱の包みはシカマルの背中にある家紋のハンカチだった





「で、でも…あんまり感想言ってくれなかったから…」
「そうかな?十分美味しく食べてると思うよ?」



チョウジ君はシカマルが食べ終えた弁当箱を見せてくれた





お、おぉう…
すごくキレイに食べてる
元々空箱だったんじゃないかっていうくらいキレイだわ…






言葉は少なくても、こんなに丁寧に食べてもらえると、こっちも嬉しいし気分がいい。







――――うるせぇな、こういうの苦手なんだよ




そう言った彼のセリフを思い出し、クスリと笑った







きっとシカマルは不器用なんだろうな
でも…、
シカマルこそ、良い旦那さんになれると思うよ





なんて言ったら「結婚なんてめんどくせー」て返してくるのが目に見えた







「きっとアカネちゃんの料理が食べれて幸せだったんだと思うよ」





シカマルの寝顔を見てみれば、とても満足そうに眠っていた





「ありがとう」






―――――また、作ってこよう。







良いトモダチが出来たなと改めて思った










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