徒然なるままに

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今日は早めに新聞配達をして、シカマルの分のお弁当も作れた




ルンルン気分でアカデミーに向かえば、知らない女の子たちに連行され、校舎はずれにある倉庫に閉じ込められた




…珍しく遅刻しない2日目に突入したというのに
やはり、珍しいことはしない方がいいということか

外に出ようにもカギと衝立(ついたて)がしてある様で、簡単には出られそうにはない





うーん、困ったなぁ…
こんなところに居て、お弁当が悪くならないか心配だ

それにしても…暗いし、埃っぽいし…

早く出たいなー…



しかし、遅刻常習犯の私が教室に居なくても、誰も違和感を感じる人はいないだろう

日頃の行いを考え直す機会になった←





いや、しかし…気付いて貰えないというのも、なかなか虚しいものだ



大人しくしていれば、いずれは彼女たちがここを開けてくれるのだろうか
…いやいや、さずがにそれはないかな



何故か知らないけど、彼女らの恋敵となってしまった私にそんな優しいことはしてくれないだろう







――――色々考えるだけで無駄に思えてきた
さて、辺りでも物色してみようか…






広さは四畳半程度で明かりは扉の隙間数センチから差し込む光と、子どもの身長では届かない位置にある天窓。

…しかも、人が出られる程、決して大きくはない





うーん、どうするものか…
壁はコンクリートで出来ていて簡単には壊せそうにないし

まー、壊して弁償とかなってもしんどいしね

扉は鉄で出来ており、開きそうにないし









――――あれ、これって私、ピンチってやつ?






そう思うと自然にため息が出た
何だか牢獄に閉じ込められた気分だわ

…あー、御日様の光と温かさが恋しいよ。







「ワンワン!!」
「うおわッ!!!な、なんだ?!」




扉の外から犬の鳴き声がする
扉と扉の隙間から覗くと、白くて耳が長く垂れた可愛らしい子犬がいた






「…ワンちゃん、私がいるのがわかるの?」
「クゥ〜ン…ワン!」



私を慰めに来てくれたのだろうか
シッポをパタパタ振って愛嬌のあるワンちゃんだなー…






「ワンちゃん、私をここから出してくれない?」
「クゥーーン」
「はははー、そうだよね。こんな衝立や鍵外せないもんね」
「クゥゥーン…」
「そんなに落ち込まないで。ワンちゃんのお陰で私、元気出てきたんだから!」
「ワン!!!」






ワンちゃんはその場を軽く一周回ると走り去ってしまった



…犬にも見捨てられてしまったのかな
―――ちょっとだけ落ち込んだ私。








…それにしても、ここって何の倉庫なんだろう?
よくわからないけど、箱とか何とか色々積み上げられている


…開けちゃおうかな。
どうせ誰も来ないし



私は一番近くにあった箱を開けてみる



「…卒業名簿?」


新しいのから古いものまで
ズラリと並べて仕舞い込んである



見ちゃおー…
軽い好奇心から一番端にあった冊子を取り出す

パラパラとページを捲っていくとアカデミーを主席で卒業した人達の一覧に目が止まった







―――うちはイタチ 七歳






「う、うっそおおおおおおおおおおおお!!!!」










マ、マジか。
これは超衝撃的過ぎる…

そりゃあー…
サスケもあんなに修行を頑張るわけだ



こんなに出来の良い兄さんを持つサスケって…
すごいプレッシャーなんだろうな


昨日の組手のサスケ
私みたいなチャランポランとした人間が天才兄さんの側にいることがよっぽど悔しかったんだろうな…







「ワンワン!!」
「ん?」


さっきと同じ鳴き声だ
ドンドン扉が揺れるので驚いて見れば、ワンちゃんが扉に体当たりをしていた





「わわわッ!そんなことしたら怪我しちゃうよ!」
「ワン!」

それでも扉はドンドンと音が止まない

「助けに来てくれたの?」
「ワワン!」




ううぅ…なんと優しい子犬ちゃんなんだろう
動物は無償の愛をくれるというけどこういう事なんだね

ちょっと感動しちゃったよ…





すると、遠くで誰かか駆けてくる足音が聞こえた

とっさに私は身構える…いやー、さっきの集団の一人が見回りに来たのかもしれないし


しかし、意外にも聞こえてきたのは男の子の声だった





「何してんだよー!赤丸!!怪我するぞ!!」
「ワンワン!!」
「え?中に人がいる?…本当か!!」
「ワン!」
「確かに誰かわかんねぇけど…人の匂いはするな」
「クゥゥーン…」
「わかった、わかった、ちょっと待ってろ」
「わん!」




え、助けを呼んできてくれたのかワンちゃん…
それにしても…、


ん?助けに来てくれたのは人なのか?
どう聞いてもワンちゃんと会話をしていた様にしか聞こえなかったんだけど…



私、耳悪くなったのかな…
それとも助けに来てくれたのは人じゃなくて犬だったりして…




とりあえず、ここから出れるみたいだ





「誰かわかんないけど…助けて!ここから出して!」
「!!…おおぅ、ちょっと待ってな!!この衝立…重ッ…!!」







そんなに重い衝立をされていたのか
…私は猛獣かよ。



それにしても女とは怖いものだ
男の子一人で苦労している衝立をしちゃうんだもんな
…何が『か弱い乙女』だ。
滅茶苦茶、怪力持ってんじゃん




しばらくすると衝立が外れ地面に倒れる重い音がした






「はーッ、結構頑丈にしてあんのな」
「ごめんね、苦労させて」
「閉じ込められたアンタが謝る事ねぇよ!…にしても、あとは鍵を外すだけだな」




扉の光が彼の影で暗くなった
南京錠を眺めているのかな…

んー、鍵はどうするか…
簡単に外れそうにないぞ…





「こうなったらッ!!!!」
「?」



ガッキーン…





コイツ、南京錠に噛みつきやがった







「いっ…痛えぇぇぇええぇぇぇ!!!!!」

「そりゃあそうでしょ!!鉄に敵うわけないじゃん!!
アンタはア●レちゃんのガッ●ャンかぁぁぁ!!!」





またはフェ●リーテ●ルのガジ●君でも可
ワン●ースのワ●ルでも可


――――いかんいかん、
伏字だらけになってしまった…





それにしてもコイツバカだろ
何考えてんだ…助けに来てくれて嬉しかったけど、だんだん不安になってきたぞ。






「くそー、やっぱりダメかァ」
「本気でいけると思ったの?」


色んな意味で心配になってきたぞ





「こうなった時はアレだ!アレ!…お前女だろ?針金か何か持ってないか?」
「女と確認したうえで、針金を求めるのもどうかと思うよ!…そんなのは持ってないけど、ヘアピンなら多分…」




バックの中を探してみれば、2本見つかった





「ね!あったよ!」
「お!そうか!!んじゃあ、扉の隙間から投げてくんね?」



なるべく扉の間に落とさないように勢いをつけて投げる






「お、サンキュー」
「それにしても、そのヘアピンで何するの?」
「そりゃあアレだよ、ドラマや映画でよくやってんじゃん。鍵穴に刺してコチョコチョとすればだな…」

「ちょっと待って!!…もしソレ失敗したら本当に開かなくなっちゃうじゃん!!」
「んー、もっと奥に入れて動かせばいけそうなんだよなー」
「人の話を聞けぇー!!!」





もし途中で壊れたらどーすんの!?
素直に教務室に行った方がいい気がしてきた!

だってこの子、不安要素がデカ過ぎるんだもん!

初心者が安易にピッキングするもんじゃないってッ!!!









――――カシャン…





「「あッ…」」






奇跡的に鍵が開いた
ちょ、この子天才過ぎるんですけど





「す、すごッ…」
「は…ハハハ!見たか!オレの実力!!」


いや、内心、自分でも驚いてんじゃん

間もなくして、重い鉄の扉が開いた



「ん、眩しい…」




明るく優しい陽の光に懐かしさを感じる
すごく暖かい



「大丈夫か?」


その真ん中にいたのは、見た目も行動もワイルドな少年だった









******











「大丈夫かよ」
「うーん、大丈夫なのかな」




少年は犬塚キバ君というらしい
見た目も行動もワイルドなのはその名前からなのだろうか
小さいワンちゃんは赤丸というらしい



キバ君に連れてきてもらったのは涼しく、気持ちがいい木陰、ちょっとした秘密基地気分を味わえるような場所だった
アカデミーにもこんなにいいところがあるんだとしみじみに思う




「なんであんなところに閉じ込められていたんだよ」
「さぁ?私もサッパリ」
「はぁ?どーゆー事だよ」
「アカデミーに着いたら知らない女子集団に拉致られて、あそこに閉じ込められた」
「なんだソレ。お前って不運ってゆうかツイてないなァ」
「ははは、全くだよ」





今度は遅刻ギリギリに登校しよう







「そういえば、名前聞いてなかったな」
「あ、そうだね。
私は藤宮「アカネか?」なんで知ってんのよ」




するとキバ君は「あー、やっぱりな」って顔をした
…なんなんだ、一体。



「女子集団に閉じ込められる奴ってアカネしかいねぇと思ってよ」
「?どういう意味よ」
「だってよー、女が女、みーんなアカネの話するんだもんよ」
「?」


キバ君との会話は疑問しか出てこないんだけど








「あー、そうだな、例えば…
藤宮アカネがサスケを横取りした
藤宮アカネがサスケを口説いた
藤宮アカネにサスケは騙されている
藤宮アカネは幻術でサスケを虜にしている
藤宮アカネは何人ものの愛人がいて
藤宮「ちょい待て、もういいわそんな陰口」



なんちゅー黒い噂なんだ。
噂というか全部彼女らの妄想に過ぎないが…
ここまで酷いとは思わなかった

それにしても、サスケ関連ばっかりだな
「口は災いの元」というがここまでとは。




恐るべし、噂力。






「…って聞いてたんだけどよ、案外そーでもなかったな」
「そーでもなくて悪かったわね」
「いや、そう怒るなって。オレは良い意味で言ってるんだからよー」
「なによッ」








「閉じ込められていた噂の姫様は、
――――純粋潔白の姫様だったってことかな」










…へ?


私はきっと、今ものすごく目が点になっていると思う


ちょ、いきなり過ぎて返す言葉がなかったんだけど





「あ、ありがとう??」
「なんで疑問形なんだよ」
「こういう時なんて言っていいのか、わかんないってゆーか…」
「そっかァ?まぁ気にすんな!!」
「わわわわッ」




雑に頭をワシャワシャと撫でられた
うおおおぉ、なかなかワイルドやな…





「まー、また何かあったら助けてやるからよ!!」
「ど、どうも??」




「じゃあ、戻っか。教室まで送ってやんよ」
「え。さすがにそこまでしなくても大丈夫だよ」
「倉庫に閉じ込められてた奴に言われても説得力ねぇー」
「………はい、お願いします」






結局、キバ君に教室まで送ってもらった
(キバ君はナルト達と同じクラスらしい)




そして二人でイルカ先生の説教をうけたのだった
(どうやら私たちがサボった授業が隣のクラスとの合同の手裏剣練習だったらしい)









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