復刻版「正義の紳士(ジェントルマン)」

□プロローグ
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某日未明。


東都刑務所では、刑務員が、夜の見回りをしていた。

特に、死刑囚達が収容されている独房棟は、常に2人組になって厳戒態勢で、見回りがされていた。


「次は672番だな。」

先輩刑務官が、後輩刑務員に確認する。

「672番は、早村ですね。」

後輩刑務員は資料を見ながら、先輩刑務官に尋ねた。

そして2人が、『672』と書かれた独房の前に立ち、中を後輩刑務員が懐中電灯で照らす。

すると―。


『!?早村の姿がありません!』

後輩刑務員が、そう叫んで中に入ったが早いか、

ゴツンっ!

という鈍い音と共に、後ろにいた先輩刑務官の呻き声が聞こえてきた。

後輩刑務員が振り返ると、そこには先輩刑務官から奪ったであろう拳銃を持った、早村がいた。

「は、は、早村!?な、何をしている!早く房に…」

すると、早村は、拳銃を刑務員に向けた。

「どうしてもここを抜け出す訳が出来たんだ。悪く思わないでくれよ…。」

次の瞬間、早村は銃の引き金を引いた。




銃弾は、刑務員の顔のすぐ横の壁に反れ、撃たれたと思った刑務員は、ヘナヘナと壁に凭れ落ちた。その隙に、早村は脱走する。

銃声を聞いて駆けつけた仲間の刑務員が、警報を鳴らし、刑務員全員で、早村の行方を追う。


早村は刑務所内から逃げだし、途中で事務室から持ち去った大量のエタノールを、壁にかけた。

そして、大勢の刑務員が駆けつけた所で、同じく事務室から持ち去ったマッチに火を付けた。

「逃げられないぞ!おとなしくしろ!」


早村はフッと笑い、呟いた。

「馬鹿だな、警察は…」

早村は、火のついたマッチをエタノールのかかった壁に投げ放った。

すると、エタノールに火が付き、同時に大きな音と共に爆発した。

刑務員達が、その様子に後ずさりしてるうちに、早村は爆発で割れた壁の隙間から脱獄した。
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