短編集♪
□フラッシュ・バック
3ページ/4ページ
コナンside
トンネルを出ようとした際に、大型トラックが道を少し外れたのか、こちらに寄ってきた。
そんなに大事にはならず、博士のドライブテクで誰も怪我は無かった。
(あっぶなかしいなぁ…。)
そんな事を考えていると、頭の上から、呼吸の乱れる音がした。振り返ると、真優が冷や汗をかきながら口を押さえていた。
「真優…?おい、どうした?おい、真優‼」
俺は思わず、声を荒げる。
俺は直ぐに、過呼吸だと見抜いた。
その理由も何となく予想は出来た。
(とりあえず、呼吸を落ち着かせるのが先決だな。)
博士に車を停めてもらい、元太にキャンプ場へ連絡してもらった。
俺は、真優を後部座席に横向けに寝転がせ、足を曲げさせた。
「真優姉ちゃん、ゆっくり息吸って‼深呼吸するみたいに‼」
そうすれば、じきに呼吸は落ち着く。
真優も必死に息を吸って、体内に酸素を取り込もうとしている。
しかし。
「はぁ、はぁ、こ、こわい…はぁ、はぁ…」
真優の呼吸は一瞬元に戻ったかと思ったが、『怖い』と言って、また乱れる。
「何が怖いの?真優姉ちゃん。」
「はぁ、はぁ、はぁ…」
真優は質問に応えれずに、意識を失った。
ーー
キャンプ場の人が、空いている部屋で真優を休ませてくれることになり、俺達は、だいぶ落ち着いてきた真優を預けて、キャンプの荷物を運んだ。
荷物運びが済み、お茶を持って、真優のいる空き部屋に寄った。
「あっ…新一君…。」
真優は体調が良くなったのか、寝ていたベッドに座っていた。
「まだ、寝とけよ。体だるいんだろ?」
「ちょっとね。でも、座ってる方が今は楽なの。」
俺は、「無理はするなよ?」とだけ言って、真優のベッドの端に腰掛けた。
「お茶、持って来てくれたんだ。ありがとう。」
そう言って、真優は2つあるコップの内手前のコップを手に取った。
「なぁ。」
「なに?」
静かな部屋に時が流れる。
「真優、お前、また…。」
宏哉さんの事思い出して発作を起こしたんじゃないか?とは、流石に聞けなかった。
「お父さんが私を庇ってくれた時の事、思い出しちゃった…。多分、条件が一致してたのかもね。あの時と。」
俺は、やっぱりか…。と思った。
あの時、起きたことと言えば、大型トラックが暗闇に突っ込んで来た事だ。
真優の父親、宏哉さんが亡くなったのも、夜、大型トラックに跳ねられたから。
『フラッシュ・バック』
過去のトラウマがふとした瞬間に蘇る事をフラッシュ・バックと言う。
主な症状としては、パニック発作等がある。
「忘れたいはずなのに、忘れたくないって思っちゃうの。もし、忘れてしまったら、お父さんが命をかけてまで守ってくれたことも、忘れちゃうんじゃ無いかって。」
真優は下を向いて、ボソボソと呟やく。
俺は、そっと真優の手に自分の手を差しのべた。
「忘れる必要なんかねぇさ。忘れずにいる必要もねぇしな。ときどき思い出す。それぐらいが一番いいんじゃねぇか?」
俺は真優に優しく言ってみる。
真優も納得したのか、
「うん‼」
と頷いた。
真優。
本当、無理なんかするなよ?
お前には、自然体が一番なんだからさ‼
→あとがき☆