短編集♪

□フラッシュ・バック
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コナンside

トンネルを出ようとした際に、大型トラックが道を少し外れたのか、こちらに寄ってきた。

そんなに大事にはならず、博士のドライブテクで誰も怪我は無かった。

(あっぶなかしいなぁ…。)

そんな事を考えていると、頭の上から、呼吸の乱れる音がした。振り返ると、真優が冷や汗をかきながら口を押さえていた。

「真優…?おい、どうした?おい、真優‼」

俺は思わず、声を荒げる。

俺は直ぐに、過呼吸だと見抜いた。
その理由も何となく予想は出来た。

(とりあえず、呼吸を落ち着かせるのが先決だな。)

博士に車を停めてもらい、元太にキャンプ場へ連絡してもらった。

俺は、真優を後部座席に横向けに寝転がせ、足を曲げさせた。

「真優姉ちゃん、ゆっくり息吸って‼深呼吸するみたいに‼」

そうすれば、じきに呼吸は落ち着く。

真優も必死に息を吸って、体内に酸素を取り込もうとしている。

しかし。

「はぁ、はぁ、こ、こわい…はぁ、はぁ…」

真優の呼吸は一瞬元に戻ったかと思ったが、『怖い』と言って、また乱れる。

「何が怖いの?真優姉ちゃん。」

「はぁ、はぁ、はぁ…」

真優は質問に応えれずに、意識を失った。






ーー
キャンプ場の人が、空いている部屋で真優を休ませてくれることになり、俺達は、だいぶ落ち着いてきた真優を預けて、キャンプの荷物を運んだ。


荷物運びが済み、お茶を持って、真優のいる空き部屋に寄った。


「あっ…新一君…。」


真優は体調が良くなったのか、寝ていたベッドに座っていた。

「まだ、寝とけよ。体だるいんだろ?」

「ちょっとね。でも、座ってる方が今は楽なの。」

俺は、「無理はするなよ?」とだけ言って、真優のベッドの端に腰掛けた。

「お茶、持って来てくれたんだ。ありがとう。」

そう言って、真優は2つあるコップの内手前のコップを手に取った。




「なぁ。」


「なに?」

静かな部屋に時が流れる。

「真優、お前、また…。」

宏哉さんの事思い出して発作を起こしたんじゃないか?とは、流石に聞けなかった。

「お父さんが私を庇ってくれた時の事、思い出しちゃった…。多分、条件が一致してたのかもね。あの時と。」

俺は、やっぱりか…。と思った。
あの時、起きたことと言えば、大型トラックが暗闇に突っ込んで来た事だ。

真優の父親、宏哉さんが亡くなったのも、夜、大型トラックに跳ねられたから。





『フラッシュ・バック』

過去のトラウマがふとした瞬間に蘇る事をフラッシュ・バックと言う。
主な症状としては、パニック発作等がある。






「忘れたいはずなのに、忘れたくないって思っちゃうの。もし、忘れてしまったら、お父さんが命をかけてまで守ってくれたことも、忘れちゃうんじゃ無いかって。」


真優は下を向いて、ボソボソと呟やく。






俺は、そっと真優の手に自分の手を差しのべた。




「忘れる必要なんかねぇさ。忘れずにいる必要もねぇしな。ときどき思い出す。それぐらいが一番いいんじゃねぇか?」

俺は真優に優しく言ってみる。


真優も納得したのか、

「うん‼」

と頷いた。






真優。
本当、無理なんかするなよ?

お前には、自然体が一番なんだからさ‼




→あとがき☆
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