黒サガニ

□薬より貴方を
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薬に耐えられず死ぬ子どももいるが、所詮使い捨てなのだから、構わない。構わないが、こいつはどうだろうとただ眺めている。いや…タイミングを見ているのだ。
薬で暴れている時は、幼くても恐ろしい力を出すものだと知っているから、頃合いをはかっているのだ。
少年は笑うのを止めて、口のはしから涎をだらだらとたらしはじめた。
ひくりと一瞬跳ね動かなくなる。
呼吸はひどく浅くそして速いが生きている。
別の容器に注射針を挿し込み、中を吸い取ると、ぐだらんとしている少年の腕に、それを移した。
「…ぅあ゛…?」
痛め付けるだけの先程の薬と違い、こちらは比較的夢見のいいやつだ。
10程度の子どもであれ、願うなら楽しい夢が見られる筈だ。
大人であれば、願う相手と…
少年の手がすがるものを探している。
ぼんやりと潤んだ瞳が焦点を結ばずに開かれる。くしゃりと垂れた銀の髪が頬や額にまとわりついている。
「はっ、あァ、ぁ」
己を繋ぐ鎖を握り締めて上気するるその姿に、男はぞくりとした。
下働きの道具も悪くはないが、別の使い道も悪くはないかもしれない。
小刻みに熱に震える身体を傷つけぬようにナイフを滑らせて、男は衣服を剥ぎ取ることにした。




わせたいならあいつらを出せと思い、笑っていたが、いよいよ意識が混濁する。
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