黒サガニ

□汚れ
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「汚れているな」
朝焼の眸が覗き込む。
「汚れてねぇよ」
鳩の血をくるりと光らせ、デスマスクはサガに組み敷かれながらわらうように答えた。
「全て必要な粛清で、総てサガの為なんだから何も汚れてなんかいないさ」
「私の為?違うな」
掴む指に力が入り、脈が煩く手首で存在を主張する。
「お前は聖域の為に私の下にいるだけだ」
「そう見えるか?なら汚れてるのはサガ…お前だよ」
手首にかけた手を離し、シャツを破り肌を暴いてくる。
「ククッハハハ。そうきたか、デスマスク。やはり貴様は汚れているぞ!」
「だから汚れてなんかねぇって…俺も、サガも」
外されたフロント。
腰を浮かせばサガの長い指が下着に掛けられ、届く範囲で二枚とも引き下げてきた。
膝でとまるそれらを、デスマスクは自らの足で脱ぎ落とす。
「お前は悲しみすら汚れきってているではないか」
だから気付かぬのだと胸に落ちてきた唇が呟きながら小さな突起を刺激してくる。
「汚れちまった悲しみ?」
どっかの詩人じゃあるまいに、悲しみなんか汚れてたまるかよ。
出かかった言葉はそのままサガの悪戯に呑まれて喘ぎに変わる。

痛みと快楽に飛びそうになる意識。

俺の心のどこにも悲しみなん
かありはしない。
だから。
小雪も降りかかりはしない。
風など吹きすぎはしない。
狐の革ごろもなどもとよりあるはずもなく。
かからぬのだから、小雪にちぢこまることはない。


なにのぞみなくねがうなく?

いいや。願い望むさ。
この道を。


あぁ、でも。
サガは…
倦怠のうちの死を夢に見て、やがて薄くも色濃い女神の気配に、

いたいたしいほど怖気づく

ことになるのだろう。
理想と現実の違いに教皇を殺し、理想を求めるがゆえに女神を忌むサガは、その現実すら維持に必死で、どんなにその責務をこなしても尚埋らぬ悲しみに、なすところなく日が暮れているのだろう。
だから。
悲しむことすら汚れていくように見えるのだろう…
望みに臨む明日の光さえ現実であるのにリアルではなく。
どこかで明日にでも終わるのを願いながらそれでも、止めたい時間を動かしているのだろうか?

それならば、繋がり揺さぶられる俺に似ていなくもない。

そうだな。
だから俺とサガとはこうして結合するのだ。
ズレにズレた理想像。
聖闘士にあるまじき黄金聖闘士の俺に、教皇足り得るのに偽りの教皇であるサガで。
虚像を積み上げていく。

「まだ、イくなよ」
背にか
かる息にいっそう掠れた喉が取り込めない酸素に痙攣しているみたいだけど。
「う…あぁ!…サガ…サガ!!…あぁ」
名前くらい何度でも呼んでやるから。
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