黒サガニ

□蟹憶喪失
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目覚めると同時に悲鳴をあげた。
衣類の着脱に飛散する埃のように、辺りには人の魂が舞い踊っていたからだ。
訳もわからず、その薄暗い建物から飛び出し、一目散にかけ上がる。
異様に長い階段も息を切らすことなくかけ上がれる自分は、おそらく体力があるのだろう。
ほどなくして、建物が見えた。助けを求めるつもりで駆け込んだ先には、金に輝く甲冑を身にした男と、その男に何処か似たーこちらは宗教的な装束を纏う男がいた。
もう、どうにでもなれと、デスマスクはその二人にありきたりな言葉を掛けた。
「悪いがひとつふたつ教えちゃくれねぇか?俺は誰で、ここは何だ…?」
笑い飛ばす二人に、どうやら俺という人間は冗談が好きだったらしいと俺は理解した。






 黒 記憶がないだと?
 カ お前を見れば何か思い出すかと思ったんだがな
 黒 蟹の分際で私を忘れるとは生意気な…
 ミ 原因が判らん以上、妙な真似はしてくれるなよ
 黒 ハッ、再度調教してやるだけよ
 ミ&カ あー…

 デ ……なんで誰もそこを否定しないんだよ?!
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