黒サガニ

□梅干し
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「サガ?あんた酔ってるだろ」
そんなことはあり得ない。
「あぁ、いささか飲み過ぎた」
サガが酔っ払ったなど見たことがない。
「なぁ、デスマスク」
「はいはい?」
「俺は今、実は正気だ」
「分かってるよ、あんたは酔わない」
でも、一応お決まりのセリフは言ってやろうか。
「でもな、サガ。酔ってる奴ほど酔ってるって言わないんだ」
「成る程な」
そして酒を飲む。
「お前は酔っているのか?」
紅い眼が細く笑う。
「酔ってるよ…」
「そうか、酔えてはいないのか」
サガの眼が部屋の片隅に置かれた茶色の壷を見た。
「あれはなんだ?」
「女神なんか詰めちゃいないさ、覗いて良いぜ」
とことこと覗きに行くなんて、やっぱりサガでも酔っているのかもしれない。
「杏を漬けているのか?」
「んー李の仲間かな?何だろうな。梅って言うんだ」
「うめ?」
「以前、紫龍のおにぎりにあって…」
ありゃ?なんでしょうね、機嫌悪くなりましたか?
「…興味がわいて……」
何故に馬乗りされてんだろ。俺。こんな近くで、呼吸されたら…酔っ払いはまずいんですよ?
「…飲むのではないのか?よい香りだったが」
「塩漬けなんだ、あれ」
良かった、気がそれた。
「食べて
みる?」
「アレをか?」
這い出た俺は、その横の、もっと小さな壷の中身をサガに差し出した。
「酸っぱい匂いだな…あっちはあんなに上質に果物の香りをしていたのに…」
「シオンくらい干からびても食えるらしいぜ」
本当か?と驚く姿がサガに似てるなぁって…こっちもサガなんだけど…髪は黒いし、眼も紅いし…あっちじゃねぇよな。
「やっぱり酔ってるだろ…サガ」
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