黒サガニ

□舞蟹
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目の前で人が一人、死んだ。
二人死んだ。三人死んだ…
自分の意思でと抗う精神。速まる呼吸。
「はっ…はぁ…はぁ」
意識して身体を動かせるようになったのは、予定数の10人を遥かに超えた24人を惨殺したあとだった。
べったりと浴びた返り血を眺めた後、残りは普段通りに積尸気冥界波で殺った。

帰還したデスマスクは自分のものではない血の匂いをさせていた。
異様な雰囲気を漂わすデスマスクに、血の気が引く思いで声を掛けたのはシュラだ。
彼の脳裏には三年前に薬と傷に魘されるデスマスクの姿が鮮明に思い出された。あの日、デスマスクは薬物を取り扱う組織に 迷い込んだ のだ。勿論、任務で。
帰還した彼が階段を使わず、報告にあがるのは常だが、その後が普段と違っていた。シュラとアフロディーテにデスマスクが倒れたと、教皇の従者が伝えに来たのだ。
教皇に抱えられたデスマスクは血塗れで、また、抱えていた教皇の法衣も血塗れであった。
薬による幻覚で、暴れたのだろうと聞かされ、驚いた。死人の怨みを聴こうと飄々としている彼が…命令とあらば俺たちにすら迷わず死神の指をたてるだろう彼が見る悪夢とはなんであろうか。
蟹座として聖衣を得た彼の見る世界はア
イオロスひとりに未だ魘される俺の比ではない。渡り合えるならば乙女座くらいかもしれないとアフロディーテと語ったあの日…
普段より瞳孔が大きく見えるのもまた、あの時のようで…
「肩をかそうか?」
シュラの申し出に、デスマスクは力なく笑った。
「俺、どこも怪我してないぜ?」
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