黒サガニ

□薬より貴方を
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正常な意識が飛ぶ。
ああ…さっきの。あれは薬か。
手足には軟弱な鎖が鈍く光る。
ヤバいなぁ暴れたら、取れちゃうよ、これ。
まぁ、全殺許可はされてんだけど…出来れば…組織の繋がり…探りたかったなぁ…ーあァ…落ちるな、こりゃ。サガに…また、絞ら…れ、…る。



叫び、悲鳴。銃声そして血。
怨み辛み、呻き、啜り泣き。一面の死に顔、重なる死体。

残念な夢だ。あまり現実と変わらなくて。トリップにならない。
「フッハハハ…」
笑える笑える。愉快愉快。
綺麗な切口から流れる体液。あの画はシュラが殺した画に見える。
あるいは恍惚と、あるいは風穴をあける身。この画はアフロディーテの作品だ。
脚にしがみつき、呪いの言葉を連ねる亡者は俺の…
「こんなんが地獄だと?笑わせてくれるぜ」
日常日常!めっちゃ普段。
さっきまでぴんぴん跳ねてたガキが、くたりと横たわるとか。希望に満ちた瞳が光りを失って動かなくなるとか。普通だろ、ふ、つ、う。

ふわりと体が浮く感じ。
ぐるりと世界が回るとか景色が逆さになるとか。
にわかに場面の切り替わるのも。
ヤベェな俺は全部出来ちまうんだ。
くそつまらねぇ。
「クッククク…」
俺の気を狂わせたいならあ
いつらくらいは出さなきゃ足りねぇよ。


じゃらじゃらと鎖を鳴らし笑い転げる少年を、男は冷ややかな眼差しで見ていた。
すばしっこい少年だった。使えると判断した。容姿も悪くない。いや、むしろ整って美しい。綺麗過ぎるのは目立って使いにくいが、これなら軽く人目をひき、取り入るに易そうだ。使ってみたいと。だから、薬で精神を、快楽で体を支配して道具にしようと思ったのだ。
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