その他

□オリーブ
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オリーブの樹下にデスマスクは座っていた。
イタリアの地に呼び出され、シュラは少し戸惑っていたが差し出されたパンと香り高いオリーブオイルにそれも消えた。
籠にはまだ何本かの瓶。
おそらくサガとアフロディーテへの手土産であろう。
シュラは緑の滴を落とすパンを口に詰め込んだ。
暮れかけた空とデスマスクの銀髪がどこか現実離れして見える。
青く若いオリーブの刺激が口にひろがる。
…何で泣いてんの?シュラちゃん。
デスマスクに覗き込まれてはじめて頬を伝うそれに気付く。
ああ…何故だろうな。
再び光ある生をお前と居られることがうれしくあり、また少し舌の痺れる感覚に生きている実感を得たのかもしれない。
本当に深い意味など無かったのだが、デスマスクは何を思ったのか。
もう三日月にも梟にも怯える必要はないんだぜ?と笑顔を向けてきた。
アテナ不在の13年間、サガの為の正義とオリーブを口にする事すら身を焼かれそうな思いだったあの頃。しかしそれをシュラは口にはしなかった。だがデスマスクは気付いていたのか。
お前は俺の苦悩を知りながら今までオリーブを喰わせていたのか。性格が悪いな。
当然だ。俺のひねくれ度合いを知ってるだろ?
そう言って口のはしをつり上げた。
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