その他

□氷の指
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今回の任務は予想外にてこずった。
急がないと身体が完全に言うことを聞かなくなりそうな気がして、デスマスクは鉛のような身体で階段を登る。
一瞬、巨蟹宮で休んでからでもと考えたが、寝たら当分起きなそうだと鞭を打ってサガとアイオロスの居る教皇の間まで登ることにした。
サガの顔を見れば少しは元気になるかもしれない。
表面上は普段通りのデスマスクを演じながら双魚宮をやり過ごしそこへ向かえば、残念なことにサガはロドリオ村に出ているとの事だった。

大丈夫か?デスマスク。
がっくりと肩を落とすデスマスクの様子に、サガに会えなかったショックだけではないとアイオロスは気付いたようだ。
だが、デスマスクはちょっと眠いだけだと苦笑してその場を後にした。


双魚宮に着いたデスマスクは空元気でアフロディーテをやり過ごそうとしていた。
残念だったね、久々にサガを拝めると思って急いでいたんだろうに。
くすくす笑っている。
てめ…知ってたなら言えよ!
訊かれてないものを答える必要はあるまい?
普段通りの会話、それすら苦痛に感じるほど自分は疲れているらしい。
場をやり過ごす為の欠伸を一つ。
ああ眠い。じゃあな。
わざとらしい欠伸はよせよ。ど
うせ双児宮付近で待ち構える気だろう?
呆れた様子で戦友は笑っている。
こちらの状態に気付いていないらしい。だが、それでいい。
はいはい、何とでもどーぞ。
極かるく、いつもと変わらずに流すとデスマスクは片手をあげてアフロディーテと別れた。

宝瓶宮が見えはじめたころには視界はかすみ、歩く姿は亡者と化していた。
階段脇の岩に身を預けながらずるずると進むしかできない。
なのに。
…やっべ…
全身の血がくだるような感覚にもはや立っているのは不可能だと脳が告げている。
それでも自分の宮まで辿り着きたいとデスマスクは脚をすすめた。
帰り…ついたら今回の死面を全力で…蹴飛ば…し…てや…る…のに…
目の前がゆっくりと暗くなっていく――
…ドサ…
宝瓶宮に脚を踏み入れたところでデスマスクは意識を手放した。
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