その他

□ある日のシュラ
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お昼前に慌てたシュラが巨蟹宮を訪れた。
デスマスク!おい、デスマスク!
壁のデスマスクに話しかけているデスマスクを無理矢理引き剥がし、かなり真剣に袋を一つ突き付けてきた。
何?シュラちゃん。オレにプレゼントくれるの?
透明感のある赤い果実がきょとんと揺れる。
ゴソゴソ覗き込めば中には瀕死の葉野菜が無惨な姿で横たわっていた。
何よコレ…
眉を寄せてシュラを見る。
野菜だが?
見ればわかるわ!いつのだ!いつ!
この前の任務の帰り、転んでいたご婦人を助けたらくれたのだ。
ただ、それを忘れていたとシュラが目を伏せる。
お前が出張したの…2週間程前だろうが!
そうだったか?
そうだったの!行く前に『急ぎではないが長くなるかもしれない。だからお前の料理で身体のバランスをとりたい。』とか言って1週間!三食きっちりここか、お前んとこにデリバリかで食っただろ!忘れたのか!
いや…忘れてはいない。お前はいつもその時のオレにあった最高の料理を出してくれるからな。
デスマスクの料理の味は忘れていないぞ。などとサバサバ答える友に溜め息をつきたくなる。
で?コレを今日何とか調理しろと…
嫌々確認すればシュラに笑顔――と言っても見慣れた者
にしか分からない程度の笑みである――が浮かぶ。
ああ…よろしく頼むぞ。
確認であり快諾ではないのだが、友は全く気にする様子はない。
出来上がるまで壁のデスマスクの怨念の言葉を浴びながら精神を磨いて来るとするかなどと呟き、物色を始めるしまつだ。
仕方なくデスマスクは野菜の整理に取り掛かった。
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