黒サガニ

□汚れ
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光は闇だ。
サガの見つめる光は、俺には闇だ。
それでも。

「ひぁ…も…サガぁ!!」
穿たれ、抉られるハラワタが蠢き求めるから。限界な癖に、サガだって無理をするのだ。
「まだだ。デスマスク」
視界が滲む。
サガを歪める。
「サガ…もぅ…」

いびつだから美しいのか?

「ッ…デスマスク!!」
その唇が俺を呼ぶたび、チカチカと瞼に灯される火は俺への葬列だ。

光ある未来が女神とあるのなら。
無いと解りきった未来を有ると信じて闇を進むしかないだろう?
なぁサガ…

苦しむサガも悦ぶサガも…光る闇だ。
だから俺は痛くも辛くもない。
悲しみすら汚れるような悲しみを犠牲だなんて片付けさせはしない。
むしろ褒美と感謝する。

後悔なんて俺はしない。
悲しまない。哀しまない。
俺の手が血濡れても。
サガの手が既に血に塗られていても。
それは称賛の赤だから汚れてなんかいない。
だって俺はお前と繋がって、お前は俺の中に居るんだから。
俺への称賛は総てサガのもので、逆は総て俺だけのもので。

綺麗に組まれた細工だから。
ほらな、汚れてなんかいないだろ。
昼夜を問わず壁の唱う讃美歌にどちらのサガも耳を傾ければいい。
間違いなく俺た
ちは道を違えているけれど、筋の通った正しく間違えた路だから。
悲しみはいらない。
汚れなどつかない。

女神がいつか戻ろうと。
いつだってサガが正しく、俺は正義だ。


「俺が聖域の為に有るのはそれがサガと繋がってるからだ」
女神の為に聖闘士が数多の血を流していいのなら。代行者たる教皇の為に流れる血も清めの水だと。
たとえ、それが偽りであっても。
偽りこそが真実なのだから。
「わかるかサガ…?」
英雄の定義も。正義の定義も。
すべて掲げた者のものだ。
悲しみの汚れも。
あると思えばそう見えるのだろうけれど。



デスマスクは色々な体液にまみれたまま、気だるげなくせにひどく愉しげに口を歪めている。
納得したのかしないのか、静かな空の眸に戻り法衣に身を包んでいるサガは身動ぎすらしない。

窓から射し込む光は今日も変わらずそんなサガを神のように美しく、深く影を刻んでいた。








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