黒サガニ

□薬より貴方を
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積尸気を移動すれば、教皇の元まで行けたろうが、どうしても積尸気を通る気には慣れなかったのだ。
ずるずると柱に身を寄せて、息をする。
闘技場からミロとアイオリアの気配が近付き始め、デスマスクは徐に歩み出す。
先輩である自分が後輩に見せていい姿ではないという衝動が、脚を動かす。
幸いアルデバランも留守のようだ。
双児宮に入るとサガの空間が広がっていた。これならチビどもに自分が晒されずに済む。と安堵したら力が抜けた。
「サ…ガ…すまねぇ…」
倒れ込んだデスマスクは手足を強張らせ痙攣をしていた。




ばしゃりと冷水に目を冷ます。
それは躊躇わず首筋と股間に浴びせられていた。
乗り物酔いであれば、容易に引くであろうが、何処か感覚は遠い。それでも吐き気と頭痛が引いたぶんすっきりした気がする。
「ぬかったな、デスマスク」
紅い眼。
「サガ…」
報告をと姿勢を正そうとした時には、頭が床にめり込んでいた。
「ぐがッ」
「貴様、それでも聖闘士最高位の黄金か!なんたる醜態よ!」
帰還したデスマスクは、聖衣を纏ったままなのだが、如何せん、相手が悪い。
露出した場所のみならず、聖衣に守られているはずの生身にすら、サガの拳は届くらし
く、外傷などなかった筈のデスマスクはみるみる血の色に染まる。
ことに、露出の多い頭部は酷い。
血を滴らす顔面。
銀の髪はぬらぬらと赤黒く、気味悪く萎れている。
「はっ…はぁ、はぁ」
しかし、薬で感覚が遠いデスマスクは苦痛に顔を歪めることなく、ただ呼吸を繰り返すだけ…
「まぁよい…」
サガの手が裂かれて露になったデスマスクの肌を撫でていく。
冷水で冷えた太股に、サガの手が熱く感じて、デスマスクは喘ぎ声を出した。
「クッククク…愚かしいな。薬に踊らされるとは」
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