人馬

□誰がために〈朝〉
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『俺…サガ様こわいな…だからアイオロス様が教皇の方がいいよ』
『サガは自分に厳しいからな、怖く見えることもあるだろう。だがそんなサガだから教皇に相応しいと俺は思うんだがな』
どうだろう?とアイオロスが小首を傾げながら答えた。
『自分にきびしいならシュラだっていっしょだよ!それに仏頂面だし、愛想ないし、サガ様くらいになったらぜったいシュラの方がこわそうだけど、シュラにはそんなこと思わないよ…同い年だからとかじゃなくてさ』
『デスマスク…俺はほめられているのか…けされているのか…どちらだ』
見慣れた者にしかわからない程度に表情を崩したシュラ…

思えばあの時には既にサガはアイオロスと次期教皇の座を争っていたのだ。もしかすれば二人は黄金聖闘士になった時からその頂点であり、女神代行の座をどちらかにと言われてきたのかもしれない。
そして僅かだが年長のサガには僅かではない自負があったのだろう。

「デスマスク…」
声をかけられたのは磨羯宮。言うまでもない、かけたのはシュラだ。
「俺は…たとえ誰に罵られようと、教皇の命に従った自分を誇りたい」
「ああ…それで良いだろう?アイオロスが過ちを犯したか否かより…女神の意志がまだ解
らぬ今、教皇は絶対だからな。尊敬するぜ…シュラ。俺ならアイオロスを助けちまっただろうからな」
最後の言葉は耳もとで囁いた。
いつもの皮肉る言い方では無いのはシュラにも解った。
「まぁ確かにお前なら黄泉比良坂にアイオロスをかくまいそうだな」
だからあえて皮肉で返した。
「覚えて居るか?昔の賭けを…」そして掘り起こす…昔の事を。
「ああ…賭けは俺の勝ちだったな」
無邪気にどちらが教皇になるか賭けたことがあった。
『デスマスク!俺は絶対アイオロス様が言った通りにサガ様が教皇だと思う』
『俺は絶対アイオロス様だな。アイオロス様は他人の事も我が身に置き換えて考えているだろ?サガ様は…他人に優しくみえるけど…何処か視点が違うきがするんだよなぁ』
『また出た。アイオロス様贔屓!』
『アイオロス様を贔屓してんのはシュラだろ』
デスマスクはアイオロスが、シュラはサガが教皇になると賭けた。
賭けたものは…
『じゃあアイオロス様が教皇に選ばれたら、俺がアイオロス様に告白してお嫁さんになってもらおうっと!』
『ならばサガ様が教皇になったら俺がアイオロス様をもらって良いのだな?デスマスク』
賭けたものはアイオロス。男だ女だなど関係なく
、好き=結婚的な安易な思いで、巻き込まれるアイオロスのことなど考えず勝手に取り決めた約束。
(賭けは確かに俺の勝ちで…だけれど…最終的にはシュラの勝ちだったわけだ)
選ばれたのはアイオロスだが、教皇になったのはサガ。そしてシュラは約束通りアイオロスをもらっていった。
身体と心ではなく、命を。
「お前でよかったよ。アイオロスを討ったのが」
シュラならばこの先真実を知っても後悔に拳を鈍らす事なくいられるだろうから…
喉まで上がった言葉を呑み込んで、デスマスクはシュラの肩を叩いた。
聖域は変わる。誰も知らないがサガという教皇の元で新しく。
今は女神が成長なさるまで…再びこの地に降り立たれるまで聖域というシステムを稼動させるのみ。







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