人馬

□二人の日常〈執務前/執務後〉
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〈執務前〉




朝日が差し込むようになった巨蟹宮。
目に優しい干したての布団の香りの彼の髪…


「お早う!デス。昨日は楽しかったな」
「あー…ロスの注文に応えてたこっちは堪えてんだよ」
同じ布団で交わす会話。
「ははは。仕方ないだろ?気持ちよくしてくれるデスが悪い」
「はいはい、すべてあんたに甘い俺が悪うございます」
悪態をつくデスマスクの髪をアイオロスはくしゃくしゃと撫でた。「…時間…良いのか?いつもより起きるの5分遅いぜ」
「ん?ああ…いつもサガに合わせてと言うか怒られないように早く行っているだけだから別に構わないさ。それよりまたデスが遅刻しないように連れてかないと…なぁ」
先日もアイオロスのおねだりに付き合ったデスマスクはあとから行くと宣って二度寝をし、ものの見事に遅刻をしたのだ。
アイオロスは昨夜のうちにデスマスクが用意してあった朝食を電子レンジに突っ込むとシャワーを浴びに消えていく。
「早く着替えろよ!無理なら隣宮の誰かみたいに裸に聖衣でも構わないから!」
途中何を思ったのか、水音をたてながら声を大に失礼なことを言ってきた。
腹がたったのでだるい腰を擦りながらデスマスクはシャワーを浴びているア
イオロスをドアごと蹴飛ばした。
それが悪かったらしい。
着替えと食事を終えたアイオロスはまだパンをかじっているデスマスクを担ぐとテンション高くまさに風のように走り出したのだ。
これがデートならアイオロスの名は伊達じゃねぇなと首筋を甘咬みしてもいいのだが…ここは12宮。
そしてこともあろうか天蠍宮でアイオロスはスピードを落とした。
小宇宙は語る。中にはサガが居ると。
「…最悪…」
デスマスクはパンを腹に収めて呟いた。想像通り、天蠍宮の私的なドアをアイオロスが叩く。
応じたのは宮の主人ミロだ。
「お早う。朝帰りか…その肩の荷物は何だ?」
「朝帰り?俺は執務に向かうだけだ、そしてこっちは見ての通り、俺の王子さま」
「…笑えん…」
「そうか…笑えると思ったんだがなぁ」
たぶん、笑うのは同じDNAをもつアイオリアくらいだろうと思うが黙っておこう。俺はここに居ないつもりだから…
「だいたい、王子さまを担ぐ姫がいるか?」
いや…そこツッコミいらないだろミロ!…まぁ俺は居ないからいいけど…
「それもそうか…」
無駄に納得したアイオロスは中に向かって叫んだ。
「おーい!サガ!俺はもう行くぞ!」
たぶん悪気はないが、きっと俺がサ
ガならムカッ腹が立つなとデスマスクはため息をついた。
居ないのも疲れる。
「おろせよ、アイオロス…」
「断らせてもらう。何故なら俺はまだ怒っているからだ」
ニヤニヤしながら言ってくる。
「性格悪いな…」
「ははは。全部デスから習ったんだがな」
笑いながら未だ無人のように生活感のなあい自分の守護する宮をアイオロスは通り過ぎた。




今日もいつもの通り、1日が始まった。
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