story
□story2
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大学に行くと告げた途端、急に曇りだしたヒロの表情。
「僕、もう寝るね。おやすみ」
そう言ってゆっくりと椅子から下り、階段を上っていった。
階段を上っていく背中がやけに寂しげだ。
―カランカラン―
しばらくヒロの背中を見つめていると、カフェのドアが開く音。
「なまえ、いたのか」
振り返れば大学から帰ってきたらしいタダシの姿。
『おかえり、タダシ』
「洗い物してくれてたのか。手伝うよ」
腕まくりをして、水で濡れた私の両手を見て悟ったのかタダシはそう言った。
『ありがとう』
お言葉に甘えて、2人並んで洗い物をする。
「ヒロは帰ってきた?」
『うん。帰ってきたよ。おやすみって上がっちゃったけど』
「ずいぶん早いな。夜更しばっかりしてるのに」
そう言って笑う顔は、お兄ちゃんそのものだった。
「あいつも、もっと他のことに頭使えないのかな」
お皿を拭きながら、ため息まじりにそう口にする。
『ヒロに大学の話したら、行く意味ないって』
「はは、生意気」
私と同じ言葉を口にするタダシ。
『私が大学に行きたいって話したら、なんか元気なくなっちゃうし』
そう言って先ほどの出来事を話せば、タダシは肩を震わせた。