*シナリオ*

□しょんぼりしゃぼんちゃん
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【本編】
履歴書を読み、わなわなと震える鉄治。

鉄治:…おい…これ……、泡森シャボンじゃねえか!
ももる:そっすよ〜
鉄二:いやそっすよじゃねえし!!なんでコイツ書類選考通したんだよ!?
ももる:だって〜女の子可愛いじゃないすかぁ〜(満面の笑みで苺味のポッキーを食す)
鉄治:だってじゃねえ!!つかまず仕事中に物食うな!!
…つかよぉ
シャボン(履歴書):なんかワー○ン?ってやつでめっけた。あったかいとこで働きたい。あとお菓子食べるの好き。
鉄治:どこからツッコんでいいかわかんねえ!この志望動機は駄目だろ!!
ももる:てか店長、泡森ちゃんのこと知ってんすか?
鉄治:話をそらすな!!
ももる:知ってんすか?
鉄治:はぁー……(深い溜め息)
知ってるも何も、有名な話だぞ?母親がファッションデザイナーで父親が銀行マン。
なかなか子供に恵まれなくて、やっと産まれたのがシャボンだったらしい
ももる:ほぇー!そうだったんすねー!なんか漫画みたい♪
鉄治:で、こっからが本題なんだが…甘やかされすぎて面接やバイト先じゃすぐ
シャボン(回想):辞めます(即答)
鉄治:恋愛なんかも
シャボン(回想):別れます(※付き合うことにして30分後)
鉄治:てな感じでな…
ももる:わぁお!すごいぃ〜!
鉄治:いやどっこもすごくねえよ!どっからどう聞いてもバリバリ問題児じゃねえか!人の話聞いてた!?
ももる:ちゃんと聞いてましたよ!はぁ〜、ますます興味湧いちゃった♡今日の面接楽しみ〜
鉄治:は?え!?はぁっ!!?面接今日なのかよ!?駄目だやめろ断れ!!お願いだから辞めてくれ!!
ももる:そう言うと思ったからあえて言わなかったんですよ〜!あ、来ましたよシャボンちゃん
鉄治:は!?ちょ、待っ…!
(言いかけたとこでシャボンが入ってくる)
シャボン:コンコン失礼しまーす!この度はお時間作ってくださりありがとうございましゅまろー☆よろしくおねしゃーす!
ももる:かわいぃ〜♡♡個性的♡♡
鉄治:いや初っ端からキャラ濃すぎだし癖が強すぎるんだが!!?てかまず話し方!!敬語ちゃんとしろよ!!!
シャボン:いやおめーがちゃんとしろし
ももる:そーよそーよ!店長でしょ!?
鉄治:いや、柔芽(やわめ)は俺の味方で居てくれ!!
シャボン:で?面接するのしないの?
ももる:どっちなんだい!!
シャボン:だいっ!
鉄治:息合わせてくんのやめろ!!

面接開始
鉄治:では、まず志望動機からお願いします
シャボン:そこに書いてるよ!
鉄治:書いてても言うんだよ!!あと敬語使え!!
シャボン:えーー
鉄治:えーーじゃないっ!!
早くしろ!!俺だって忙しいんだ!!
ももる:売り上げ落ちてるしお客さん少ないから大丈夫です〜〜
鉄治:オイ!!余計なことを言うな!!!
シャボン:マジ?
鉄治:いいからお前は早く志望動機を!!
シャボン:えっとね、単純に次探してたのと単純にあったかいとこで働きたかったのと単純にお菓子が好きだから!
鉄治:馬鹿正直過ぎ!!不採用!!
ももる:待っっってください!そうやってシャボンちゃんに限らずいっつも不採用にしてるじゃないですか!!
鉄治:流石にこれは駄目だろ!!
ももる:店長っていっつもそう!そんなんだからみんな辞めてっちゃうんですよ!パワハラ気味だし言葉キツいしすぐ決めつけて差別するし!
いいですか!?今の若い子はもうゆとり通り越してさとりなんです!スパルタ過ぎると今の若い子は逃げていきます!佐藤君や伊藤くんの案だってすぐ却下するし、大体マドレーヌもクッキーもパウンドケーキもシフォンケーキも全部プレーン味のみってどういうことですか!?そりゃ売れませんよ!!
鉄治:わあぁぁぁぁ!!うるせえええ!プレーンの何が悪い!?糞がああぁぁぁ?!!
(地味に傷付いてる)
ももる:プレーンが悪いんじゃなくて!他の味も増やしましょうよってことです!!
鉄治:俺は素材の味を大事にしたくてだな…!!
ももる:シャボンちゃん!シャボンちゃんはどんなお菓子があったら嬉しい!?お菓子作り得意だよね!?ね!?
シャボン:ふぇっ!?え、えっと…シャボンがもし考えるとしたら…
ももる:考えるとしたら…!?
シャボン:素朴で懐かしいプレーン味の物もあっていいと思うけど、やっぱりお客さんは日々刺激を求めているから色んな味やピンスタ映えするデザインを増やしたほういいのかなって思う…
ももる:例えば!?
シャボン:まずプレーン味の他にチョコや抹茶、コーヒーや紅茶味、胡麻味とか色んな味があると嬉しいかも…。
おから練り込んだりバター不使用とかヘルシー系もよき…。
ももるん:うんうん!!
シャボン:どの年代をターゲットにしたお菓子屋さんなのか分からないけど、やっぱり色んな年代に幅広く愛されるお菓子もあると嬉しいよね…。あと限定で桜味や苺味とかどうかな…?
ももる:可愛い!美味しい!
シャボン:シャボン型や雲をテーマにしたアイシングクッキーとかも可愛いかも…!ここは焼き菓子屋さんなわけだし、オリジナルの似顔絵クッキーとかどうかな…?
ももる:いい!すっごい楽しい…!!
鉄治:……試用期間は2週間
ももる:…店長?
鉄治:毎朝8時出勤、店は10時オープンだ。遅れずに来いよ(顔を見せず背を向ける)
ももる:店長…!ありがとうございます…!
シャボン:わああぁい!さんきゅー鉄治!
鉄治:てん!ちょう!!だろうが!!なんで下の名前知ってんだよ!!
シャボン:ももるんが教えてくれた!
鉄治:あいっつ…!
シャボン:ありがとうございます…!店長…!(天使の笑み)
鉄治:べ、別にお前のためじゃねえし!!(ちょっと顔が赤い)

ーー数日後
ももる:わあぁ!すごい…!
シャボン:へへっ、頑張った!
鉄治(N):泡森シャボンは化物(バケモノ)だった。
というのも、態度や言動を除けばコイツは天才。危なっかしくて少々過集中気味だが、手際も良く覚えが早い。試作で作ったという菓子類は全て店のイメージにピッタリでどれも味のレベルが高かった。むしろ、店長という名前に縋(すが)って偉そうに振る舞う俺なんかよりも店や商品を理解している。
俺は、いつから素直さを忘れたんだ…?
どこで俺は間違えたんだろう?
最初は純粋に菓子が好きだった。でも店を経営するにあたって、好きだけじゃやっていけないことを知った。
俺には泡森シャボンは眩(まぶ)し過ぎる。アイツは客からも愛されて、実力やアイディアで売上も上昇した。
……なんで?なんでこんな奴なんかに?
俺はコイツが怖くなり、同時に憎らしくなった。

バンッ!!とテーブルを叩く鉄治
シャボン:っっ!?
鉄治:お前さぁ、まだ正雇用じゃないのにいっちょまえに案出して生意気言ってんじゃねえぞ?
シャボン:……え
ももる:店長!?そんな言い方しなくても…!
鉄治:んだよ、文句あんのかよ?
ももる:シャボンちゃんは店長やお店のことを考えて案を出してるだけです…!怒るなら私を怒ってください!
鉄治:柔芽(やわめ)は黙ってろ。俺は今泡森と話してるんだ(低音で冷たく威圧)
ももる:……っ!
鉄治:お前の噂、よく聞くんだよ。『辞めます』が口癖で色んなバイト辞めてるってな。
シャボン:どうしてそれを…

鉄治:何が言いたいか分かんないって顔してるな?ハッキリ言ってやるよ。
お前みたいな人間、生きてる価値ねえんだよ。
シャボン:……っ!!
ももる:店長っ…!!
鉄治:大体、俺がいつ助けてくれなんて言った?自分が役に立ってると思って付け上がってんじゃねえぞ?
泣くか?泣くのか?ほら、
そうやってすぐパワハラだって騒いで帰ったらママに慰めてもらうのか?ん?
ももる:店長いい加減に…!(シャボンがすかさず入る)
シャボン:私、もうここには来ません。余計なことしてすみませんでした…。
ももる:シャボンちゃん…!?(シャボンを追いかけようとする)
鉄治:止めるな!それまでの奴だったんだよ!
ももる:でも…!
鉄治:いいから!!
鉄治(M):元々小さかった泡森の身体がさらに小さく感じる。俺は、弱い物いじめなんかしていない。至極真っ当なことを言ったまでだ。
ああ、これでやっと…元の生活に戻れる。だけど俺の心のモヤモヤは、何日経っても消えないままだった。

数日後
鉄治:…?
鉄治(M):作業場の調理器具を見ると、全て綺麗に磨かれている。使われていない物から使われている物まで。床は埃(ほこり)一つなく、作業台の油汚れも全てなくなっていた。
ももる:それ、全部シャボンちゃんが磨いたんです
鉄治:……っ!?なん…で…
ももる:あのあと、店長が早番で帰ってからシャボンちゃんが戻ってきたんです。どうしてもお手伝いがしたいって。そしたら、自分から進んで動いてくれたんです。
鉄治:…アイツが…自分で…。
ももる:シャボンちゃんは不器用なとこもあって誤解されやすいです。でも、彼女は彼女なりに、前を向こうとしています。それでも彼女は…、シャボンちゃんは生きてる価値がないですか?
鉄治:……俺は…俺は…!
鉄治(M):俺が悪いとこもある、でもどうしても謝りたくない!謝りたくない!
俺が否定されて嫌だったなんて言えない!でもアイツは俺を否定したつもりはない!
じゃあどうしたらいいって言うんだ…!

作業場に戻ってくるシャボン
シャボン:ももるん出来たよ〜!って、あれ…?てん…ちょう…?!っ!!
(慌ててももるの後ろに隠れる)
ももる:シャボンちゃん…!
シャボン:あの…あのね…、
シャボンね…?(震えた声で)
ももる:うん…
シャボン:初めて自分のやりたいこと見つけたの。シャボンのパパとママは、シャボンが働かなくてもいいって言った。ずっとお家に居てもいいって言われた。学校には行ってたけど途中から学校に行かなくていいって言われて、勉強は家庭教師の人がつきっきりで教えてくれた。
鉄治:……
シャボン:でも、周りの子達はみんなちゃんと学校に通ってて、ちゃんと自分で自分のことを決めて、みんな自分の足で歩いて大人になってく。
ももる:……
シャボン:…ママにね、お金持ちの人と結婚するように言われてたの。それが女の幸せだって。…でも…、なんかそれじゃ違うかもって思って…!(泣きそうになりがら)
ももる:シャボンちゃん……
シャボン:…まだ、ここに来たばかりだけど…シャボン、このお店が好き。店長が居て、ももるんが居て、喜んでくれるお客さんが居て…嬉しかった
ももる:私も…嬉しかったよ 
シャボン:だから…だからその…、
ももる:うん……
シャボン:シャボン、ちゃんと大人になりたいの。
シャボン、また店長を怒らせちゃうかもしれない。
でも、頑張るから!言葉遣いも直すから!
お願いします…ここに、
『Happiness (はぴねす)』に私を置いてください(頭を下げる)
ももる:……店長(軽く睨む)
鉄治:……俺も…その…言い過ぎた…悪い(すっごい小声で早口)
シャボン:…え…
ももる:店長が…謝った……!?
鉄治:その…役に立ってないことはない…。明日から毎朝8時、送れず来いよ(背を向ける)
ももる:店長…!!
シャボン:ほ、本当にここにいてもいいの…!?ですか…?
鉄治:……そう言ってんだろ、ったく同じこと言わせんなめんどくせえ(頭をボリボリかく)
シャボン:ふええええぇぇん!ありがとてんちょおおぉぉおぉ…!(大号泣)
鉄治:だああぁ!!泣くな泡森ショボン!俺が悪いみたいじゃねえか!!
シャボン:ふえええぇぇん!!だってえええぇぇ!!あとショボンじゃなくてシャボンなんだけど!!
鉄治:どっちだっていいだろ!!
シャボン:良くない!です!
鉄治:なんだよその取ってつけた敬語!やる気あんのか!
シャボン:ありましゅまろ…あります!!
鉄治:普通に言えっ!!!
ももる:ふふ、仲良いですね♪
鉄治:どこがだよっ!!
ももるん(N):シャボンちゃんの物語は、まだ始まったばかり♡
ー続くー
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