*シナリオ*

□【声劇用】『助けてやろうか、ヒーローさんよぉ』
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【―プロローグ―】


望(N)
「―ソイツは、突然僕の前に現れた。不良だし、横暴だし、何を考えてるかも分からなくて、敵なのか味方なのかすらもさっぱり分からない。…でも、ちょっといい奴なのかもしれない」


ちょっといい感じのBGMが流れる


望「声劇ver.」


謎の男「助けてやろうか、ヒーローさんよぉ」


【本編】


望(N)
「ヒーロー…。アニメとか特撮でよく見かける正義の味方だ。ヒーローというものを初めて知ったときはそれはもう感動物だった。弱き者を助け、悪い奴をやっつける。なんてカッコいいんだろうって憧れた。
小さい頃、よくヒーローごっことかして遊んだっけ。
…なんだか懐かしいや
今となればいい思い出だ。
でも、大きくなってから分かった。
というより、思い知らされたんだ。
現実に…ヒーローなんて存在しないって」


【――学校】


望(N)
「僕の名前は明日川 望(あすがわのぞむ)。どこにでも居るような普通の高校生だ。そんな僕は」

「き、君達、やめろよっ!!」
望(N)
「冴えないクラス委員だ」


不良男子A
「あっ?てめえ俺らに指図とか上等か?」


不良男子B
「上等か?」



「指図とかじゃないよ!!校則違反ならまだしも、喫煙に飲酒だよ!?
そんなの駄目に決まってるじゃないか!!」
望(M)
「よし、言った。ちゃんと言ってやったぞ。僕は何も間違ったことは言っていない」


不良A
「てめえのノーミソは大丈夫か?」


望(M)
「は?」


不良B
「俺らになんも言えなくて、いつも隅っこに居るような落ちこぼれのおめぇが」


不良A
「俺らに歯向かうなんて100年早いんだよっ!!!」


女子A
「うっわ集団とかひどっ」


女子B
「ないわーマジないわー」


女子A
「誰か助け来ないかなー」


女子B
「あんたが行けばいいじゃん」


女子A
「えー?無理だよぉーそれにあんな奴助けてもなんのメリットもないじゃん」


女子B
「まあそれは言えてる」


女子A
「でしょー?」


女子B
「きゃははは!!!」


望(M)
「くっそ女子共こんにゃろう…!!っていうか、なんで僕がこんなことやらなくちゃいけないんだ。大体、くじ引きで当たったのがよりによってクラス委員だなんて…。普通推薦とか立候補で決めるんじゃないのか?どうなってんだよこの学校っ…!!」


不良A
「おいてめえ、俺らを前にして考え事とかいい度胸してんじゃねえか」


不良B
「いい度胸してんじゃねえか」


【バキッ、ボキッと
指を鳴らす音が聞こえる】



「ちょっ、待ってよ、なんでそんなことにっ…!?ていうか、何みんなしてこっち見て…って…うわああああああっ!?」


不良A
「ケッ、大したことねー奴」


不良B
「思ったより超弱かったな」


不良A
「もやし野郎」


不良B
「ギャハハハッ!!」


望(N)
「散々ボコボコにされた挙げ句、暴言を吐かれる」
望(M)
「なんで僕がここまでされなくちゃいけないんだ…。ああ…なんだか、意識が遠退きそう…」
望(N)
「そのときだった」


謎の男
「あーあ、派手にやられちまってんな」


望(N)
「見知らぬ男が近付いてきて、僕の目の前に立ちふさがっている。ソイツはニヤリと笑みを浮かべながら、こんなことを言ってきたんだ」


謎の男
「助けてやろうか、ヒーローさんよぉ」


望(N)
「そのあとは、記憶にない」


【――保健室】



「ん…、んん…?ここは…」
(気を失っていた望が目を覚ます)
望(N)
「辺りを見渡すと、真っ白な天井とベッドが目に入る。少し消毒液のキツイ臭いもして、この場所が保健室なんだと確信した」

「あれ…ってことは、僕倒れちゃったのか…って、痛っ!?」
(気だるそうに体を起こそうとしたときに激痛)
望(N)
「体に激痛が走る。なんともいえない痛みが僕の体を襲った」


【カーテンを開ける音】


愛結原先生
「気が付いた?」 


望(M)
「ん?この声…」

「…もしかして、愛結原先生?」


愛結原先生
「まあ!覚えててくれたの!?先生嬉しい〜!!」



「そりゃまあ…、有名ですすら」
望(N)
「愛結原先生は、最近新しく来た保健室の先生。童顔だから僕達と同じくらいに見られやすいらしい。元々明るい性格だからか、愛結原先生は男子からも女子からも人気だ」


愛結原先生
「それよりもあなた、大丈夫!?
クラスの人達に注意したらボコボコにされちゃったって噂になっていたわよ!!」



「そ…そうですか。ちなみに僕が注意した人達ってどうなったんですか…?」
(少しオドオドビクビクして怯えながら聞く)


愛結原先生
「勿論停学処分よ!あんなことしていいはずがないわ!」



「で、ですよねー…」


愛結原先生
「でも親切に運んでくれた人が居てくれて良かったわね」


望(M)
「…ん?」



「運んでくれたって…先生達とかじゃないんですか?」


愛結原先生
「ええ、男の子だったわよ」
(さらりと)


望(M)
「男?僕に友達なんていないのに…、
一体誰が…?」

「…どんな人だったんですか?」


愛結原先生
「それが…、見かけない子だったの」
(少し困りながら)



「見かけない子?」


愛結原先生
「ええ、髪が長くて…目がこ〜んなに!つり上がっててたの…!うちの生徒じゃないことは確かだけど…一体、どこの子なのかしら」



「な…、謎ですね」


望(M)
「…ん?待てよ、さっき停学処分って言ったよね!?うわあ絶対アイツらに呪われるよ…!!というか、長髪つり目の奴って誰なんだよ!ああもうなんかわけわかんないよおおおおおっ!!」


愛結原先生
「…明日川君?」



「うわあああああああっ!!」


愛結原先生
「ちょっと、大丈夫!?」


望(N)
「そのあと、僕はまた気を失ってしまい、授業にも出席することが出来ず…そのまま早退することになってしまった」


【――自宅】



「ふう…今日は色んなことがありすぎたなあ…」
(部屋のベッドに寝転がる)
望(M)
「にしても、長髪につり目…?そんな人学校で見かけたことないぞ…」

「一体…誰なんだ…?」


謎の男
「呼んだか?ヒーローさんよぉ」



「…ヒーローさん?って、うわあああああああああ!?だ、誰だよお前!!」


謎の男
「誰って…お前を助けてやった命の恩人に決まってんだろ。つかギャーピー騒ぐな。耳いてえわボケ」



「いや誰だって同じ反応するよっ!
!!」
望(M)
「って……、なんだよこの髪に目!完全に二次元じゃないか!!実際に居るのかよこんな奴!!」


謎の男
「ところで、不良共にボコボコにされた気分はどうよ?軟弱ヒーローさん」



「最悪に決まってんじゃん!!あと何だよその呼び方!」


謎の男
「ヘタレでもやしでビビりでへぼくて言いてえことも何も言えねえ…なんて、そこら辺に転がってるようなただのザコキャラでしかねえな」
(可哀想、または哀れな人をみるような目)



「い、いちいちそんなこと言わなくていいっ!!」


謎の男
「ほんと…随分と弱くなっちまったんだな。」
(少し悲しそうに、ボソリと小声で)



「…でも…、お前の言う通りだ。僕は弱い。チビで落ちこぼれで…言いたいことも上手く言えない…。情けないよな、本当」
(情けないよなからは苦笑する)


謎の男
「………。…ああ、情けねえな」



「なっ…!?」


謎の男
「情けねえ。弱すぎだろ本当。テメェ玉ついてんのか?」



「な、お、お前っ…!!もう少し言葉を選ぶとかしないのか…!?」


謎の男
「んなもんしねえよ…、つかさ、してどうすんだ?なんかあった度に『そうだね、酷いね』って嘘吐かれてよぉ…虚しくならねえか?」



「違っ…」


謎の男
「違わなくないよな?」



「っ……」


謎の男
「さっき自分でも言ってたもんな?僕は弱い、チビで落ちこぼれで言いたいことも上手く言えない、情けない…って」



「…………ッ…くっ…」
(抵抗しようとしたけど俯く)
望(N)
「ナイフで抉るような痛みが僕の心臓を襲う。言葉とは凶器だ。今目の前で…僕にとって言われたくない言葉ばかりが放たれている」
望(M)
「それなのに…、何も言い返せていないなんて…」
(絶望してる感じ)


謎の男
「くくくっ…」


望(M)
「…何笑ってんだよ。というかコイツ、初対面なのに失礼じゃないか?図々しいにも程がある…!!」

「な…、何がおかしいんだよ…」


謎の男
「俺…、いいこと思いついちまった」



「…は?」


謎の男
「お前の人生、俺が変えてやるよ」



「…はぁ?」
(間抜けな返事)


謎の男
「そんでお前が俺にきたねぇ本性をさらけ出すまでまとわりついて、お前の精神を限界まで追い詰める」



「ふ、ふざけるな!なんでそんなっ…」


謎の男
「もう決めたからな、俺はやるって決めたからには徹底的にやる」


望(M)
「なん…だよ…、それ…
無茶苦茶じゃないか!なんで…なんでなんでなんでなんでなんで…!!クソッ…」

「や…れるもんなら……やってみろ!!!」
(精一杯の抵抗)


謎の男
「ああ…。お前がどこまで耐えられるか…見物(みもの)だな」
謎の男(M)
「苦しいか?苦しいだろ?ならもっと苦しめよ。そんで俺んとこまで這い上がってこいよ。なあ、ヒーローさんよぉ」


望(N)
「そしてアイツは」


謎の男
「よう、ヒーローさん」


望(N)
「次の日も」


謎の男
「おい、軟弱ヒーロー!今から屋上行くぞ。…はぁ?授業?んなもんサボれや!!」


望(N)
「また次の日も」


謎の男
「オイ、ゲーセン行くぞゲーセン!!そんあとはゲーム買いに行くぞ!
!すげえ面白そうなのがあんだよ!
…はぁ?課題?んなもん誰かにやらせろや!つうか今ドキ授業サボらねーで糞真面目に受けたり大して面白くもねえ課題を真面目にやる奴居るんだな。あ、その真面目さがお前の唯一の取り柄だったな。ワリィ☆」


望(N)
「またその次の日も、アイツはまとわりついてきた」

「………っ」
(いかにも不満そうな、不機嫌そうな様子)


謎の男
「どうした?んなつまんなそうな顔して」



「んなっ!?誰のせいだと思って…!」


謎の男
「…ヒーローはヒーローらしく、堂々としてろ」



「…ずっと気になってたんだけど…」


謎の男
「あ?」



「なんで…、僕のことをヒーローさんって呼ぶの?」


謎の男
「………」
(急に無言)



「…?なあ、なんで急に黙るんだよ」


謎の男
「…なんとなく?まあ、そのほうが面白いから」
(『まあ』から悪役のような笑みを浮かべる)



「はあ?なんだよ面白いって」


謎の男
「さあな。つか腹減った。
なんか美味そうなの買ってきてくんねえか?つか買って来ねえと殴る」



「………」



【――保健室】



「もーっいやだっ!!いつまで続くんだよこんなのおおおおおっ!!!」
望(M)
「なんでアイツは毎朝僕の家の前で待ち伏せして朝から晩までまとわりついてくるんだよ!?一体どうなってるっていうんだ…!!…というか、なんでアイツは僕の家を知ってるの?」


愛結原先生
「あらあら、お友達は大切にしなきゃダメよ?」



「いやまず僕が大切にされてないんですけど!!」


愛結原先生
「ふふふ、でも明日川君
最近ちょっと楽しそうよ?」
 


「楽しそう!?先生は何をどう見てどう聞いて楽しそうって思ったのさ!?」


愛結原先生
「なんか全体的にイキイキしてるなーって思って♪」


望(M)
「いやイキイキしてないよ疲れてるよ!!」


愛結原先生
「…それにしても、本当に不思議よね…その子。どうしてそんなに明日川君にこだわるのかしら?」



「こだわるっていうか…、ただ単に面白いおもちゃが見つかったとか…、そんな感じなんじゃないんですかね」
望(M)
「じゃなかったら、こんな乱雑な扱いしないだろう普通」


愛結原先生
「それは…、違うと思うの」
(ちょっと静かに)



「…え?」


愛結原先生
「なんだか、貴方を遠い昔から知っているような…そんな感じ」



「………」


愛結原先生
「その言動や行動も、彼なりのあなたへのサイン…みたいなものもあるのかもしれないわね」



「…サイン?」


愛結原先生
「まあ、これは私が勝手に思ったことだけどね。…あんまり真に受けちゃダメよ?明日川君は人の話を真に受けちゃいそうなところがあるから!」



「うぐっ」


愛結原先生
「…でも、これだけは忘れないで。 失ってしまってから気付くのは…遅いから」
(少し切なく、シリアスに)



「…遅い?」


愛結原先生
「ええ。貴方にはまだ分からないかもしれないけど…誰かが傍に居てくれることって…結構大きいのよ?最初は迷惑って思ってても、いつの間にかそれが当たり前になっている。それって、自分も相手もそれでいいって思ってるからじゃない?」



「………」


愛結原先生
「だから…失ったあとに『ああ…、実は大事な存在だったのかも』って気付くことが大半なのよ…」



「………」


愛結原先生
「…まだ分からないって顔してるわね」



「えっ」


愛結原先生
「ふふふっ、思いっきり顔に出てるわよ♪」



「う、嘘!?」


愛結原先生
「うーそっ!とにかく、そのお友達大事にしなさいよ!」



「…」


愛結原先生
「返事は?」



「…はい」


愛結原先生
「よろしい!あ、それともう一つ」



「なんですか?」


愛結原先生
「どんなに酷いことを言ってしまったとしても、必ずごめんなさいを言えるようになりなさいっ!」



「…ごめんなさい?」


愛結原先生
「あと『ありがとう』、も!!」



「ありがとう…?」


愛結原先生
「素直になるって、結構大事なんだから!」



「………」


愛結原先生
「返事は?」



「…はい」


愛結原先生
「よろしい!それではこれにて、先生の個人授業しゅーりょー!」


「ってこれ、授業だったんですか!?」


愛結原先生
「人生においての、かしらね♪」



「はあ…」


望(M)
「大…事にか」
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