反逆SS1

□◆刻の進む者たち
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スザクを2階へ誘ってから、アーニャと二人で遅めの昼食の準備をする。
我が主の好きなシチューに、オレンジマーマレードを添えたパン。
新鮮なサラダに、ジュレも用意する。

アーニャは背が伸びたし、料理がうまくなった。感情も素直に表に出るようになった。
私も野菜を枯らす事がなくなった。オレンジ作りも軌道にのってきた。

―――これは、5年間に起きた変化だ。



変わらないのは我が主に対する忠義と、我が主の姿。
主から『ゼロ・レクイエム』の全貌を聞かされて、説得もした。
死ぬ必要はないのだと。
だが、願いは聞き遂げられなかった。

でも、その計画を話している時の主の顔は穏やかで
何より主自身が望んでいるのだと、納得をして計画に加担したのだ。


だが“ゼロ”に殺された後、宮廷からC.C.と共に主の遺体を運び出している時に驚くべきことがおこった。
確かに心臓を貫かれたはずの主が起きあがったのだから。




あの瞬間から、私の忠義は方向を変えた。
皇帝に仕えるのではなく、この世から消えた存在となった我が主を護るため
軍を抜けて農場を開いた。
隣国との国境ぎりぎりの広大な土地。
軍力は黒の騎士団だけが所有しているおかげで、こんな辺境にやってこれる人はいない。
我が主が落ち着ける場所となったのだ。



しばらくして、足音が聞こえてきたのでロビーへ向かう。
ちょうどよくこちらも昼食の用意が済んだところだ


螺旋階段から降りてくるスザクの顔を見て息を呑む。
彼の姿も5年前の『ゼロ・レクイエム』から変わっていなかったから。
「早く来てくれないと昼食が冷めちゃう」と文句を言いにきたアーニャも驚いた顔で動きが止まっている。



5年前と変わらない困ったような微笑みでスザクが何かを言いかけた時
我が主がなにも変わった事はないというように、広間へ向かうのをみて慌てて追いかける。

「・・・あなたは、ルルーシュと一緒に生きてくれるのね」

「あぁ。それが俺の意志でありC.C.の願いでもあるからね」

取り残されたアーニャとの短い会話。
だが、それだけで理解したようで寂しそうに、ホッとしたように微笑んだアーニャにこちらからも微笑み返す。

「今までルルーシュを護ってくれてありがとう」
深々と礼をする。

「当たり前のこと。私たちは…違うけれど想いは変わらないはず」

それだけ言って背を向けて広間へ向かうアーニャにもう一度、今度は跪いて礼をしたあと彼女についていく。
広間では美味しそうに湯気の立った料理が並んでいる。





「さぁ、スザク。遠慮せずに食べてくれ。アーニャの作る料理はなかなかうまいぞ?何せこの俺が教えたのだからな」

「なんかその言い方、ひどい」

「実際酷かっただろう?アーニャの料理は」

プクッとアーニャが頬を膨らませるのを穏やかな眼で見護るジュレミア卿。


そんな会話を聞きながら食事を頂く。
確かにアーニャの作った料理はおいしかった。
そして、彼らの作るオレンジが美味しい理由がわかった気がした。

―――だって彼らはこんなにも『優しい』のだから。



戦場で司令官として、軍人として、他を殺してきたから
他にだって、護るべきものがあることを理解しながら、それを力でねじ伏せて
護るべきを護るために戦った彼らだからこそ

だからきっと、こんなにも今が愛おしいものだという事を理解しているのだろう











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