綺麗なバラには棘がある

□第一話
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出会いはほんの些細な出来事だった。



「ごめん!薫!もう少しで来るはずなんだけどね」

昔からの馴染みの先輩の頼みで、先輩の彼氏を待っているのだ。

一緒に。

「いえ、大丈夫ですよ、早く来てくれるといいですね」

本当はというと今すぐにでも帰りたいのだ。

一年生の私が二年の階にいることがどれほど苦痛なのか、この人には分かってもらえなさそう。

「どうも一人で待つのは寂しくてさぁ、また今度何かおごるね」

顔の前で手を合わせてニコリと笑う先輩。

「本当ですか?忘れないでくださいね?」

私も微笑み返す。

「忘れないよ〜、ちゃんとお返しするよ!……………あ!来た!」

視線を私から私の背後へ移す。

「もう!遅いよ!何分待ったとおもってんの!?」

顔を膨らませ、彼氏と思われしき男子生徒に説教している。

「わりぃ!なかなか先生見つからなくてさ!スコアブック返せなかったの!」

……ていうかもう、帰っていいですかね?

お目当ての彼氏も来たことだし、私の役目は終わったんですよね?これ。

「せんぱっ…………」

「薫、紹介するね、この人はあの野球部の御幸一也くんなの!」

最近付き合ったんだぁ〜と、
嬉しそうな顔をしながら私に話してくれる。

「一也!この子は私の中学の時の後輩で、黒崎薫っていうの、一緒に一也のこと、待ってくれたんだよ」

やっと御幸という人はこちらに視線を向けた。

「どうも、うちの彼女がお世話になりました」

「いえ、大したことはしてないです」

私はその場を去ろうとした瞬間。

「あ!ごめん一也!教室に忘れ物しちゃった!とってくるね!薫もお礼したいから待ってて!」

「いいですよ!てかまた今度って言ったんじゃ・・・」

「いいのいいの!じゃ、行ってくるから!」

「わかった、待ってるから」

御幸先輩と二人残されてしまった。
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