企画部屋

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Two bell silence







「好きです」






明智警視がご機嫌で紅茶を淹れてくれてそれに手を伸ばしながら自分ですら意識せずサラリとこの言葉を口に出してしまった

だって、仕方ないじゃない

明智先輩を好きになってもう何年たつかわからない

東大文Tを首席入学、首席卒業

司法試験を20歳で合格した時は絶対に弁護士になるのだと思っていた

しかし先輩が選んだのは警察官僚

司法試験合格より、国家公務員試験第1種に合格するほうがまだ可能性があるかもしれないと

東大文Uの私はそれはもう死に物狂いで勉強した

そして奇跡的に突破して、見事警察庁に入庁できて

研修期間を経て最初は某県に配属されたけど

いつかその日を夢見て働いていたら見事警視庁捜査一課に異動が決定

それだけでもミラクルなのに

なぜか、明智警視と仕事を組むことになったこの世の奇跡

時に厳しく(こういう時がほとんどだけれど)

時に優しく(滅多にあることではないけれど)

明智警視の仕事ぶりはそれはそれは本当に勉強になって

恋愛感情を抜いたとしても明智警視の下で働けている自分はとても幸運なのだと思う


でも――

邪な・・・・・・もとい、慕情を胸に秘めている私は

事件が解決したときに遠まわしにアプローチを仕掛けるのに

明智警視は気がついてくれない

周りを見渡せば明智警視に同じような思いを抱く婦警だらけで

私は嫉妬と羨望の眼差しを一体どれくらい受けたのだろう

なかには、行動にでて告白する婦警さんも数人いたみたいだけど

全員泣いているみたいだった


『恋は持久力より瞬発力』


東大時代の友人にアドバイスを受けたものの

行動に移せずもう年単位の月日が経過していた

まさか、意もしていない今、勢いで告白するとは・・・・・・



だって、仕方ないじゃない

かかりっきりだった事件が解決して

残務整理も一息ついた夜、捜査一課には私達2人だけだったし

明智警視はいつになくご機嫌で

成人男性にこの表現を使うのもおかしいかもしれないけれども

でも警視が凄く可愛く見えて

そんな警視を見ている私が嬉しくてテンション上がってしまったのだと思う

言ってしまって、自分の発言に気がついたところでもう遅かった

言った言葉は取り消せないし過ぎた時間は戻ってこない

私は自分の全身から血の気が引くのを感じ始めたけれど、覚悟を決めることにした

顔色が白くなり始めた私に明智警視は

「そうですか、貴方もこの紅茶が好きとは嬉しいです。この紅茶のメーカーは1707年に2人の青年が始めたグローサリーショップから始まって・・・」

ガクッ

そうきたか

仕事をしている時は、あんなに鋭い観察眼で的確な推理をおこなうのに

人間関係や、自分に向けられる想いに対してはどうも鈍い

尚も、得意げに紅茶の説明を続ける明智警視を遮って捲し立てた

「あの・・・・・・明智警視。私は――モチロン、紅茶も好きですけど、今は明智警視のことが好きだと言っているんです」

毒を食らわば皿まで

せっかく、鈍い警視がすっとぼけてくれたのだから

ここで「とても美味しい紅茶ですね。銘柄教えてください」とでも言えばきっと喜んで教えてくれただろう

だけど、私は勢いで


「だから、私は明智警視のことが好きなんですってば!」


もう1度、警視の顔を見つめて言った

しかもそれだけじゃない

「――!!」

驚いた警視に対して私は近付きその唇にキスをした
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