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Talent of the love







プライベートにおいて高遠と明智の会話は少ない





犯罪芸術家・高遠遙一

警視庁捜査一課・明智健悟

片方は・・・・・・迷惑な部分も多大にあるが――ともに自らの職務に対して非常に勤勉かつ有能な2人は、仕事を離れれば世間一般で言うところの恋人同士の関係にある

双方多忙で、いわゆる禁断の恋が滞りなく成立しているのは高遠による明智宅への――頻繁な訪問の結果と言えた

高遠の滞在期間は、離れている時間に比べれば短い

半日足らずで、次なる犯罪現場へと向かわなければならないことも度々あれば、明智が急な事件に呼び出しを受けることも珍しいことではない

そのような短時間の滞在の場合、再会と別れの挨拶を除けば、2人がまともに言葉を一言も交わさないことはしばしばあった

交際当初であれば、それには目に見えて明らかな理由があった

希少価値ともいえる逢瀬に、慣れない頃は挨拶もそこそこに2人でベッドに倒れ込むからだ

性急に身体を繋げあい、肝心の近況報告はベッドの中で睦言の区別も曖昧に交わされたものだった

そんな若さに任せた逢瀬は、このところ耐えて久しい

それでも2人の会話が少ないことには変わりなかった

今日も高遠の訪問の挨拶に明智が慣れた様子で応えて以後、2人の間に未だまともな会話は交わされていない

滾る欲を持て余して寝室に篭るわけでもなく、2人はリビングに鎮座しているソファに腰を下ろしている

寄りそう姿に関係の深さをあらわしているが、高遠はニュース番組を見ながら

「美しくない・・・」

と呟き、明智はフランス語で書かれた新聞に目を落としていた

同じ空間に存在しているにもかかわらず、2人は沈黙を守ったまま、それぞれの行動をとっている

眼前のローテーブルには、高遠到着を見はからって豆から挽いたブルマンが今なお、僅かな湯気をたててお行儀良く並べられていた

決して頻繁ではない逢瀬で、高遠と明智が共有できる時間は、そう長くない

限られた時間を有効に使うならば、一言でも多くの言葉を伝え合い、一秒でも長く触れ合ってしかるべきだ

その点では、到着早々のベッドインは効率的だといえる

それに引き換え愛を育むに貴重な時間を互いのペースで過ごすことは、この上ない贅沢というべきか、愚の骨頂と評すべきか

かといって、高遠と明智の間に険悪さや倦怠感があるわけではない(あくまでもプライベート上だが)

2人が会話に時間を割かないのは互いに別のことに忙しいからだ

それぞれの速さで流れる時間の中、おもむろに高遠が右腕を持ち上げた

隣で動く気配を察して、明智が新聞から顔をあげる

明智の視線の先では高遠がテレビから視線を外さないまま、右手で顎に触れていた

その様を確認して明智は読んでいた新聞を閉じて立ち上がる

気がついた高遠の視線を感じながら明智はキッチンへと入っていった

戻ってきた明智の手にあったのは、ワイングラスと重厚感あるラベルが貼られたボトル

コーヒーカップを下げて、ワイングラスをテーブルに置き、ワインを注ぐと目配せだけで高遠に勧める
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