企画部屋

□プライべったー(BL編)
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記憶喪失物語




以前に、「明高が幸せになるにはどちらかが記憶喪失になるしかないのでは」と呟いたところから派生したSSです。明智さんが記憶喪失になって高遠さんと2人で暮らすことになったんですけど、突然最終回を書いてしまった感満載ですw




高遠が愛の巣に戻ると部屋は暗かった。
おかしい。
明智が1人で出掛けるはずはないと思うと瞬時に緊張を張り巡らせる。
高遠がリビングの電気をつけると同時に後頭部にコチリと直径数cmにも満たない鉄があたった感触。
高遠にはそれが何かわかり過ぎていたので、大人しく両手を上げた。
――そして、こんなことをする人物が誰かも解ってしまいやりきれない気持が襲う。

「これは一体何の真似です、健悟さん? ――いや、明智警視」

とうとう危惧していたことが現実になる日がやってきたのだ。
カチリと撃鉄を起こす音がした。

「――。貴方を逮捕したところでどうせ脱獄するだろう。それならば――」
「それならば、いっそここで僕を射殺します? そしてこの家もろとも焼失でもしてしまえば、この世から犯罪者が1人消えて、貴方は職場に何食わぬ顔で復帰できるというわけだ」
「だまれ」
「いくら、記憶を失っていたからといって警察が血眼になって探している犯罪者と一緒に暮らして愛しあっていたことが明るみになればあなたの輝かしいエリート人生は先がない。それならばここで全てを終わらす――実に貴方らしい考えだ、明智警視」
「――。」
「おや、銃口が震えていますよ。貴方らしくもない。早く引き金を引いたらどうです。おわかりかと思いますが、これが最初で最後のチャンスですよ。今を逃したら僕は逃亡し、またどこかでマリオネットを見つけ出す」

高遠の挑発するように口調に明智は拳銃を強く握り直し、引き金に指をかける
しかし、指が震えてどうしても引けない

「どうしました、健悟さん。まさか貴方ほどの人が思い出に浸っているわけでもないでしょう」
「いいから、だまれっ!」
「いやですよ。だってもうすぐ僕は死ぬんだ。最後くらい愛しい人と話させて下さいよ。死刑囚にその位の自由はあるでしょう」
「だまれと言っているんだっ!!」
「いやだと言っているんですよ。貴方と過ごした日々は僕にとってほんのひと時の幸せでした。貴方に抱かれている時は、今なら貴方に殺されてもいいとすら思っていました」
「・・・・・・」
「それが偽りの幸せだったとしても、僕には偽りが本物だったんですよ。だって、誰にも与えられなかった愛情という形のないものを貴方からいただけだのですから」
「・・・・・・」

「最後に1つだけ質問させてください。貴方が――自分を警視庁の警視だと思い出したのは、・・・・・・僕が、地獄の傀儡師だと思い出したのは――いつですか?」
「――・・・・・・3日前です」

「・・・・・・」
「・・・・・・」

高遠はこれから言うセリフが涙声にならないか心配になった

「なるほど――貴方は記憶が戻っていたにも関わらず僕を昨晩抱いた。そして、引き金を引けない。それが全ての答えじゃないですかね? ――ねえ、そうでしょう。健悟さん? さあ、その拳銃を下に向けて、僕とイギリスで暮らしませんか?」



END
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