゚+long main+.

□Sound of the heart Part3
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「はあっ、はあっ!」

私はギターを両手で抱えて全速力で走った。

いつものベンチに急いで向かっている。

急いでいるのだけれど、

なんでかヒール履いております…。

そして、かわいらしいヒラヒラの白色のワンピース。

横にお団子状態にして一つに縛り、少し横から髪の毛を出している。

お母さんは「あら、可愛いじゃない!」と褒めてくれたが…

今の私にとってはとても不都合だ。

「もう、なんでこんなに走りにくい格好させたの〜?」

ただでさえ足の遅い私がこんな走りにくい格好をしていたらさらに遅くなってしまう。

というか、横を通った急いでるサラリーマンより遅いってどういうことッ?!(泣)



「…はあ、やっとついた!」

少し遠くからいつものベンチを覗いてみると、ジャージ姿の結弦くんが座って待っていた。

…カッコイイ…。

純粋に思った言葉がそれだった。

この前は少し周りが暗くてよく見えなかったけど、こんな感じだった〜…。

…って、こんなこと思ってる暇ないでしょ!

ほら早く結弦くんの所に行かなきゃ!

「ごめんね、待ったかな…ってあれ?」

寝てるの…?

そうだよね。

いつも練習練習で疲れてるはずだよ。

もう少し寝かせてあげよう。

私は起こさなように結弦くんの横に座った。

ギターを静かに地面に置いて結弦くんの顔をのぞいてみた。

そよそよとした心地よい春の風が彼の前髪を揺らす。

その前髪が目元にかかり、ん…と少し身をよじる。

私は、無意識にそっと彼の前髪を耳にかけていた。

すると、結弦くんが少しずつゆっくり目を開けた。

「ん…玲香ちゃんだ…。」

「あ、起こしちゃったかな?」

「ううん、ごめんねこっちこそ寝ちゃってて。」

「いえいえ、こちらこそ。
 
 来るの遅くなっちゃって。」

「あれ…もしかして、私服?」

「うん、そうだよ。
 
 …もしかして、似合わなかったかな?」

「ううん、すごく似合ってる。」

えへへ、とほわほわした笑顔で言った。

「って、俺何言ってるんだろう///」

「ふふふ、ありがとう///」

なんだか照れちゃうな〜…。

お母さんの言うとおりにして正解だったかな、なんちゃって。

「じゃあ、曲聴かせてくれない?
 
 ずっと楽しみにしてたんだ。」

「うん、ちょっと待ってて!」


私は、せかせかとギターを出して歌った。

いつもとは違う景色の中で、いつもとは違う心情で…。


 
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