銀魂

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常夜の街で最も大きい建物。
もはや城といっても過言ではない建物に龍麗はいた。

下の街にいた遊女達とはまた違う、選りすぐられたのであろう美しく着飾った遊女が部屋に案内してくれた。

豪華な内装、美しい着物に飾り、美しく魅せる化粧、鼻をくすぐる甘い香り、全てがキラキラと輝いている。
しかし、どんなに着飾ろうと此処の女達の目に輝きは感じられない。
例えるなら“商品”。
心などとうに死んだと言わんばかりの目だ。

ここの女達の目はどこか自分に似ていると龍麗は思った。

遊女が部屋の襖を静かに開けた。
すると、ビリビリと身体を包むような威圧感が部屋から溢れだした。

堂惨を部屋の外に待機させ、敷居を跨ぎなかに入り部屋の主に頭を下げた。


この常夜の国の主であり、光に嫌われた夜を生きる一族。
それを統べる者、春雨の幹部であり、夜兎の王と呼ばれた男。
幼き頃の龍麗師、夜王鳳仙である。

「………お久しぶりですお師匠様。」

「…客人と聞いてはいたが、随分と懐かしい顔が現れたものだな龍麗。」

鳳仙は、扇子をスッと龍麗に向けると軽く振って見せた。
どうやら近くに来いという意味のようだ。
龍麗は鳳仙に歩みより目の前で膝ま付いた。
鳳仙は扇子で龍麗を上に上げさせニヒルの笑みで見つめてきた。

「…フッ。見ない間に美しくなったものだ。幼き頃より一層磨きがかかっている、ますます母親に似てきたようだな。」

「お師匠様も、お元気そうでなによりです。」

表情ひとつ変えず淡々と喋る龍麗に鳳仙は豪快に笑い食事を持ってこさせた。

「…まぁいい。久しぶりの再開を楽しもうではないか。さぁ、遠慮などいらん。」

「……ありがとうございます。」

目の前に並ぶ豪華な食事にてをつけた。
すると、隣に美しい遊女が座り酒を注いできた。

「…ありがとう。」

「へ、ぁ……///////」

龍麗が礼を言うと、遊女は顔を赤くさせうつ向きモジモジと身体をくねらせた。
すると鳳仙は酒を一口飲むと口を開いた。

「…風の噂で聞いた。あの鬼蝶が親殺しにあい死んだとな。」

ピタリと箸を止め鳳仙の方を見る。
鳳仙は扇子を弄びながら真っ直ぐに龍麗を見据えていた。

「…実の息子二人の親殺しに合うなど、鬼蝶は余程運がなかったとみえる。」

龍麗はただただ黙り混んだ。

「あの女の呪縛から逃れたいがために戦ったと見えるが、見る限り解放などされておらぬ。未だ母の怨念に取り憑かれ戦場をさ迷うか。やはりあの女の息子ということか、魂が戦場を求め次の戦場をこの地球に定めたか。」

「…お師匠様には、そのように見えますか。嫌だな、地球に来たのはただの仕事ついでの観光ってだけですよ。」

龍麗は真っ直ぐに鳳仙を見返す。
すると、鳳仙はニヤリと笑いまた酒を飲んだ。

「わしが知らぬとでも思ったか。貴様の噂は此処まで届いている。貴様は地球に至るまでに3つの種族を根絶やしにしておるではないか。」

「…………仕事ですから。」

「…ククク。血は争えんということか、何年か見ない間に益々あの女に似てきたな顔も魂も。」

龍麗は、ただ黙り鳳仙を見つめた。

「特にその目はあの女を思い出す。夜兎の血に取り憑かれ、最も血を誇っていたあの女に。………貴様とて気づいていない訳ではあるまい。」

「…俺はただ、色々なものを見てまわりたいだけです。」

そう言うと鳳仙は扇子をとじると立ち上がり龍麗に近づき顎を掴んだ。
互いの視線がぶつかり合った。

「…どんなに星を巡ろうと、貴様がたどり着く先に安息の地などはない。貴様の血がそうさせるからだ。どんな綺麗事を並べようと貴様が真に求めるのは戦場よ。貴様は永遠に鬼蝶の呪縛からは逃れられない。」

その瞬間龍麗から鋭い殺気が漏れだし近くにいた遊女達は小さな悲鳴をあげ怯えだした。
しかし殺気を当てられた鳳仙は、今まで以上に機嫌よく笑った。

「…ククク。そうだ、その目だ。血を求め戦いに狂う貴様の姿は美しかった。その目はあの頃より何ら変わってはおらんようだ。」

鳳仙は、グッと龍麗を引き寄せる。
少し動けば互いの鼻がくっつくほどの距離だ。

「…龍麗わしのモノになれ。貴様が望むのであれば、金でも酒でも極上の物を用意してやろう。貴様の母の様に戦場を望むなら与えてやろう。それとも、真に戦場を拒むというならその乾きを潤す別の方法を教えてやろう。」

(………エロじじい。)

そうボンヤリと思いながら何の抵抗を見せることはなかった。
鳳仙の手が頬を撫で唇が触れそうになったとき襖の外から声が聞こえた。

「失礼します鳳仙様。お客様がお見えです。」

「………通せ。フッ、まぁいい。良い返事を待っているぞ龍麗。」

そう言い鳳仙は元の位地に戻り酒を飲んだ。
龍麗はホッと胸を撫で下ろして、一時的に去った危機に安堵した。
そして同時に、どうやって断るかを考えていた。

(…お師匠様の目は本気だった。この人のことだ、言い出したら聞かないところがある。下手に断って、脚でも切り落とされて監禁でもされたら洒落にならないな。)

そんな事を考えながら食事を再開した。
すると、襖が開き遊女に案内された若い男が部屋に入ってきた。
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