彼岸島

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〜雅〜

愚かな人間に止めを刺そうとした時、何者かの邪魔が入った。
怪力坊主かとも思ったが、奴にしては小さい。
この私の鉄扇を止める奴など、丸眼鏡か宮本明ぐらいのものだろう。
だが、丸眼鏡は先日の戦いでまともに動けんはずだ。
宮本明に関しては、私の足下で既に虫の息。
こいつは一体何者だ。

火花散る鉄扇の向こうに見えた顔に、雅は目を剥いた。

長めの前髪の間から見える漆黒の瞳と目があった。
力強くも何処か儚い瞳に雅は一瞬時が止まったように思えた。

「……ぶっ飛べバカ野郎!!!」

凛とした声が聞こえた瞬間腹にきた衝撃に、自分が蹴り飛ばされたことに気がついた。

「……兄貴!!立てるか!」

「………っ……真夜…。 」

真夜……この者が。
宮本明を肩で支えながら、怪力坊主の元へ行こうとしている。
少し長くなった髪を後ろで小さく結び、全体的に華奢な体型だ。
顔は整っていて、一瞬女かとも思ったが声からして男だ。

何故だか、あの男を見ると胸の辺りに違和感を感じた。
何百年と生きてきて初めての感覚だ。

まさか……この私が……。
逃がしてなるものか。
この感情の意味を知りたくなった。
こんな距離、私にかかれば一瞬で縮められる。
そう思い地面を蹴った。
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