小説
□今日の日は さようなら
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― いつまでも 絶えることなく 友達で いよう
今日の日は さようなら また 会う日まで ― (作詞作曲:金子詔一)
あれは俺が小学3年生くらいの時のことだった。
学年中で転校生が来ると噂になった。学期の始まりでもない変な時期だったため余計に皆、気になっていた。当時の親友だった笹木が話しかけてきた。
「転校生って女子かなぁ。女子だったら良いなぁ。高尾もそう思うだろ?」
「んー、どっちでも良いよ。そもそも俺らのクラスじゃねぇの。」
結局、転校生は隣のクラスに来たらしい。そんな話題で持ち切りになっていた。
「なぁ、高尾。隣のクラス覗きに行こうぜ。」
断る理由も無いし、どんな奴かは、やっぱり気になっていたので、笹木の誘いに乗って隣のクラスに偵察しに行くことにした。
「おーい!石川ー!」
笹木が隣のクラスにいる友達の石川を呼び出した。
「おぉ、どうした?」
「お前のクラスに転校生来たんだろ?どんな奴なんだ?」
「あー。転校生なら、あの一番奥の一番後ろの席に座ってるメガネの奴だぜ。」
石川に言われた席に座ってるところに目線を移す。そこには、おとなしそうなメガネの男子がいた。緑色のサラサラ髪、可愛い顔立ちだと思った。一人で本を読んでいる。誰も近づけさせないようなオーラが出ていた。机の上には、古臭い豚の貯金箱が置かれていた。・・・なんで貯金箱。
「なんだぁ。つまんなさそうな奴。」
笹木は、そう呟いて自分達のクラスに戻るぞと促してきた。変わった雰囲気の奴だなと思ったが、違うクラスだし、そんなに気にすることは無いかと気に留めなかった。・・・はずだった。
俺は、隣のクラスを通り過ぎるたびに、何気なく目があいつのことを追うようになっていた。いつも一人で本を読んでいる。その机の上には、いつも変な物が置いてあった。ウサギ柄のマグカップ、二つ穴を開けられる穴開けパンチ、でがい虫眼鏡、魚の図鑑、カエルの置物・・・何なんだろう。気にしたら負けかと思って気にしないようにした。