小説

□cerisier-Ne m'oubliez pas-
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 「っ・・・くそっ。」

 成り行きで出会った女の中で果てた。なんて最低な奴なんだと自分に向かって吐いたつもりだったが、相手の女は「どうしたの?」なんて優しく声をかけてくれた。だけど俺は苦笑いで、

 「何でもねぇ、こっちの話。」

 って返すのがやっとだった。



 女を抱けば忘れられると思った。結果、虚しさだけが残った。
 俺から好きだと言ったのに、俺から別れようと言った。本当に自分勝手で相手のことを考えていない。自己満足も甚だしい。
 時々、当時のことを思い出しては、その思い出をかき消すように女を抱いた。でも消えない。消えないどころか、ますます思い出の中のあいつに飲み込まれる。

 「はぁ・・・。俺って、こんなに女々しいやつだったのかよ。」

 こんなに苦しい思いをするなら、いっその事あの時に素直に自分の気持ちを伝えるべきだったんだろう。でも普通の人生のレールに戻るなら、あの時しかなかったと思う。



 高校生だった、あの頃。勢いで付き合った。お互い・・・いや、俺だけだったのかもしれない。俺は真剣に恋をしていた。相手は俺に合わせてくれていただけかもしれない。それでも俺と恋愛しれくれた。愛し合っていたつもりだ。その頃のことを若気の至りだったと、今なら引き返せる、許されると思った。だから・・・

 「真ちゃん、俺と別れてくれないか。」
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