短編・番外編

□REBORN
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名前がいつもどうり掃除をしていると
後ろに綱吉が何時の間にかいた

「…寿命が縮むので気配を消してこないでください」

「あはは、ごめんね」

ため息を吐きながらそう言った名前に
綱吉は軽く笑うと
困ったような顔をして口を開いた

「名前。ちょっとお願い事があるんだけど…」

「なんでしょうか」

「今夜、俺の婚約者になってくれない?」

「………」

にこにこと笑っている綱吉の言葉に名前は持っていた掃除用具を落として
暫くの間固まる
そして、名前は落とした掃除用具を拾うと
綱吉に向きかえって話しかけた

「すみません。聞き間違いをしたかもしれません。もう一度言ってくれませんか?」

「だから、俺の婚約者になって」

「…何故ですか」

「今夜、パーティーに招待されたんだけどね
 一人でいたら絶対に女に話し掛けられると思うんだ」

「守護者の皆様は…」

「俺と俺の婚約者か妻しか行けない」

えー…と無表情ながらに名前は呆れると
少し考える素振りをする
そして、諦めたようにため息を吐いて頷いた

「分かりました。行きます」

「よかった…そういえば名前はダンスは踊れる?」

「ええ…まぁ一応は」

安堵したように微笑んだ綱吉に
名前は困ったように眉を八の字に下げて言った

「ですが…パーティーに行くような服はありません…」

どうしたら…と頬に手を当てて悩んでいる名前に
綱吉はそんな事かと呆れたようなため息を吐くとにっこりとした笑顔で言った

「大丈夫だよ。今から一緒に見に行くから」

「…は?」

綱吉は名前の手を掴むとすたすたと歩いて行った


「……」

「これの方が似合うんじゃない?」

「…はあ…」

名前が綱吉の手を引いて来たのは
高級感溢れる洋服店である
そこで名前は店員達と綱吉が選んだドレスを試着していた

「うん。やっぱり濃い色の方が合うね」

「白い肌が際立っていて良いですわ!」

「だったら黒色と紺色のどちらかですね!!」

「名前はどっちがいい?」

「……紺色で」

疲れたように声を出した名前の後ろには山になっている服があった
そして店員が差し出した紺色のドレスを受け取ると
名前は試着室に入ると着替え始めた

「いきなりですまなかったね」

「いえいえ!」

「逆に綺麗な人なので楽しかったですよ」

「あの…着替え終わったんですが…」

「わあ…」

「あなたのような人の為に作られた物ですね」

「……」

店員達の言葉に曖昧な笑みを浮かべていた名前だったが
黙っている綱吉のところに行く途中で他の店員に連れられ
名残惜しそうにチラチラと振り返りながら他の部屋に連れられていった

「何か言った方が良いのでは?」

「…何か言ったら襲いそうだったんだ」

「それはそれは…だったら今から大変ですね」

「それは…っ!」

綱吉は驚いたように固まり、ある一点を見つめた
そこには軽く化粧と髪を上げた名前が居た

「絶世の美人ですね!」

「化粧の仕方も合ってるようです」

「……」

何も聞こえていないのか名前の方をジッと見たまま固まっていた
名前は綱吉に背を向けて店員と話していたのだが
綱吉は名前の項や白い背中、際どい背中の部分を見て目を逸らした

「綱吉様、顔が赤いようですが…」

「え…うん…大丈夫だよ…」

何時の間にか近くに居た名前は綱吉の顔をみて顔をかしげた
目を泳がしながら頷いた綱吉は名前の手を引いた
そのまま手を引いて代金を払うと店の前に置いてあった車に乗って運転手に指示をした

「あの…綱吉様…少し恥ずかしいのですが…」

「慣れて」

「あと…何故私にイヤリングを?」

「プレゼント」

「不機嫌ですか?」

「別に」

むっとしている綱吉に名前は寂しそうに瞳を揺らすと
綱吉が着けてくれた真珠のイヤリングを触った
柔らかく微笑むと目を閉じて会場に着くのをジッと待った

「名前起きて。着いたよ」

「ん…」

名前は左半身と腰に暖かさを感じながら心地よい声を聞いた
心地よかったのか、暖かい物に擦り寄ると擽ったそうにそれは笑った

「クスクス。名前、起きないとどうなるかわからないよ」

「んー…」

何かに顎を優しくつかまれ名前が薄く目を開けると
優しく微笑んだ綱吉の顔が近付いてきた

「ん…」

「おはよう名前。起きた?」

「綱吉さん…おはようございます…」

「おはよう。」

名前のさん付けにきょとんとした綱吉は名前の手を引くと
エスコートをして会場に入っていった
会場に行く途中、名前は左手の薬指にある指輪に気付いた

「名前?どうしたの?」

「あの…指輪が…」

名前の困ったような顔に綱吉は曖昧に微笑む
予想以上に顔が近かったせいか、名前は顔を赤くすると逸らした
その反応に満足気に微笑むと会場の中に入っていった

「…今更ですが…私パーティーで何をするのか知りませんよ?」

「ん?簡単に言えば食事して、酒を飲んで、喋るような場所だよ」

「…取り敢えず綱吉様に任せます」

「うん、だけど…」

妖しく笑った綱吉は名前の耳元に顔を近づける
そこで綱吉は低音でささやいた

「俺のことを様付けするなよ。したら…わかるよな?」

真っ赤になった顔でコクコクと頷く
綱吉はニコッと笑うと名前をエスコートして歩いて行った


「美味しい?」

「はい。とても美味しいです」

横で嬉しそうに食べている名前にそう問うと名前は微笑んで頷いた
そっかと嬉しそうに頷いた綱吉は名前の腰を抱いて
名前を見ている男たちに牽制をした
悔しそうに見てくる男たちを綱吉は鼻で笑った

「やあ、君達も来ていたんだね」

「バーニさん」

「バーニ婦人まで…」

名前も食べる手を進めると綱吉、名前の順で言葉を発した
その事に夫婦はクスクスと笑うと和やかに話始めた

「久しぶりね、名前」

「はい。お久しぶりです。」

「私…あれから肉じゃがの味が忘れられなくて…」

「じゃあ、今度あったら教えますね」

「ええ!お願いするわ!」


「お久しぶりです。バーニさん」

「久しぶりだね綱吉君。あれからどうだい?」

「彼女の事ですか?」

「ああ」

「自覚させる為に頑張っています」

「そうか」


「「そういえば…二人は結婚したのかい/したの?」」

「「していません!」」

男性群、女性群に別れて話していたものの
同じ質問をすると息ピッタリに同じ言葉を吐いた
思わず顔を見合わせると、話し相手の方に目を向けた

「私じゃ駄目なんです」

「何で?」

「…私は彼に似合いませんから…」

悲しそうに目を伏せた名前はバーニ婦人にそう呟くと
顔を真っ赤にして話している綱吉を置いて外へ歩いて行った
庭にある大きな池に行くと立ち止まって月を見上げた
その目には涙が浮かんでいた

「…何を期待していたんだか…馬鹿みたいだわ」

嘲笑うように呟いた名前は池の中にある足場に足を踏み入れた
舞うように足場から足場へと足を進める名前
何時しか名前は少し広い屋根がある場所に出た

「……」

名前は不意に口を開く
月を見上げながら歌を歌い始めた
その歌は好きの苦しい思いを綴った歌だった
そして、名前は何時の間にか涙を流しているといきなり誰かに抱きしめられた

名前の耳元では荒い息遣いが聞こえた
危ない息遣いではなく、急いでいたような息遣いに名前は少しだけ安心をした

「…名前っ!行かないでくれ!」

「綱吉さん…?何故ここに…」

「名前が居なくなったから探しに来た」

怒ったように言い返した綱吉に名前は前に回っている綱吉の腕をふわりと撫でた
その目は悲しそうに揺れていた

「…綱吉さま、私はあなたが好きです。
 ですから、もうこんな事はおやめください。」

名前は綱吉の腕から抜け出し
悲しそうな笑みを浮かべた
そのまま名前は走った
誰も付いてこれないような速さで自分の家に帰った
名前はドレスを脱ぐと、ハンガーにそれを掛けてシャツを着た
そのまま名前は倒れ込むようにベットに眠った



機会があったら続きを作りたいです…

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