REBORN

□彼女の仕事
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唯がコツコツと廊下を歩く
そうして歩いていると、少しだけ掃いて休んでいる女性がいた

「花園さん…どうしたんですか?」

「空野さんっ!」

呼びかけると、ぱぁぁぁあと顔を明るくさせた
唯が嫌な予感を感じていると
花園が口を開いた

「桃疲れちゃったぁ」

「そうですか。お疲れ様です」

「だからね、はいっ!」

「え…?」

そういって渡されたのは花園が持っていた掃除用具
それを茫然とした面持ちで見ていると

花園は麗しい笑顔で口を開いた
聞こえてきたその言葉に唯は眉間に皺を寄せた

「それでね!
 この廊下と玄関と…」

今日決められた仕事を全て押し付けられ
唯はため息を吐きたい衝動に駆られながらも
いつもの無表情さで対応をした

「…分かりました…
 貴方は皆さんの邪魔にならないようにしてください」

「はぁい」

嬉しそうな顔で走っていく花園を見送る
誰かが来てもいいように、閉心術を心がけながら
掃除をしながら心の中でぶつくさ文句を言っていた

「……(確かフレンチメイドでしたっけ。あれ動きづらくないんですかね。
 それにしても廊下を少し掃いただけなのに疲れたとか…)」

廊下の銅像や壁に掛かっている絵画の額を磨き、塵ひとつ無くなるまで掃除をすると
大きな玄関を磨きながら心の中でぶつくさと言い

その後も、言われたとおり仕事をこなし
唯が腕時計を見ると、裾を翻し毅然とした様子で歩いて行った


綱吉がリビングに入ると、キッチンでは黒髪のメイドが銀食器を磨いていた
それを尻目に身ながらソファに座って少し目を閉じていると

自分の傍に来た気配に目を開け、目線を下げると
ソファの前にあるローテーブルの傍に肩膝をついて
ソーサーやソーサーに載っている紅茶を出していた

「…なんで…」

その言葉に首を傾げながら
盆からミルクポットやシュガーポットをローテーブルに置く

そうしてから立ち上がり
3歩そこから下がると、首を傾げながら質問をした

「すみませんが沢田様。
 何が“なんで”なのでしょうか」

不思議そうに綱吉を見るメイド
その質問に綱吉は苦笑しながらその質問に答えた

「いや…今日はコーヒーの気分では無かったから…
 何で気付いたんだろうと思ってね」

「何で…ですか…」

ふむ…と片手を口に当て考えているメイド―否、唯を見ながら
綱吉は紅茶に砂糖を入れてかき回していた

「そうですね…人にはそれぞれ癖がありますから…」

「癖?」

「はい」

「失礼ですが。
 沢田様は紅茶が飲みたい日とコーヒーが飲みたい日では
 ソファに座った時の反応が違うんです」

「例えば?」

「例えば…」

また考え始めた唯を見ながら
綱吉は紅茶を飲み始めた

「…(おいしい…)」

「そうですね…
 例えば紅茶が飲みたい日は少し目を閉じたりボーとするんです
 それで、コーヒーを飲みたい日は匂いを嗅ぐような気付かない程度の所作をしたり…
 まぁ…そんなとこでしょうか…」

「…知らなかった…」

その言葉にクスクスと笑うと
唯は少しむっとしている綱吉にある事を言った

「私たちメイドはそうゆう癖を見て判断するのが仕事ですから」

「へぇ…」

それでは失礼します。と綱吉にお辞儀をして出て行った唯
その姿を見送った綱吉は
知らず知らずに、楽しそうに微笑んでいた

「メイド…か…少し勿体無いな」

そういえば、と綱吉は思い出した
少し前に、机の上にあった大量の書類が整理されていて仕事がしやすかった
きっと彼女がやったのだろう

「本当に勿体無いな…」

残念そうに呟き、ティーカップに口を付けたところでリビングの扉が開いた
綱吉がそちらに目を向けると
二人の守護者と、先日メイドになった女が入ってきた

「十代目!お疲れ様です!!」

「お、美味しそうなお茶なのな」

そこはかとなく、めんどくさそうにしていた二人は綱吉を見ると様々な反応をした
ぱぁぁあと顔を明るくする獄寺、気さくに話しかけてくる山本
綱吉は、昔から変わってないなと思うと同時に
二人と入ってきた女に目を向けた

「…その人は?」

「わ、私は花園桃と言います!
 昨日からメイドになりましたっ!よろしくお願いします!!」

その自己紹介に綱吉達は何の感情も浮かばなかった
ただ、自己紹介をした花園が
心の中で永遠にね、と付け足したのを知っていたのは本人だけである

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