聖なる扉の物語

□王様のティータイム
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「一体何のつもりだい!」
「王の命令だ。きてもらう。」
 金色の髪の少女が、ユノのことを、信じられないくらいの力で抑えつけてきた。
「放せって言ってんだ、放せ!」
「ユノ!」
 物音に気付いたのか、幼馴染の一人が駆け寄ってくる。金色の髪。
「おいユノを放せ!ユノがなにをしたってんだ!」
「王に逆らうのか。死にたくなければ、おとなしく従っていろ。この女は預かる。」
「そんなことさせない!折角…せっかく六人そろったんだ、せっかく全員そろったんだ…なのに…いまさら奪われてたまるかよ!」
 幼馴染は、そうどなって剣を抜いた。こっちは一人、相手は七人。勝てるはずなどない。
「〔ペルセウス〕!!」
「ペル、おやめ。やめるんだよ!」
「でもっ」
「あんた一人で勝てる相手じゃないよ。相手は円卓の騎士、しかも半分以上いる。…あんたは、ほかのガキどもを守りな。あたしは自分で何とかする。アポとヒュアをまたどっかヘやったら、あんたのこと殺すからね。」
 幼馴染は咥えていた煙草を地面に落とし、はきなれているらしいブーツで踏みつけた。
「ちっ…言ってろ…。…イライラする、さっさと連れて行け!消えろ!」
 ばたん、と、ドアが閉まった。
「行くぞ。おとなしくついてこい。」
 明りがついたままの家から、怒鳴り声が聞えた。
『オル、酒持って来い酒!』
『ペル、そんなの体によくないって!』
『知るか!あんなあばずれいなくなってせいせいするぜ!』
 どうやら、幼馴染が、ほかの同居者に当たっているらしい。
「まったく、あいつは…。」
「ユノさん、手荒なまねをお許しください。」
 少女が、押さえつけていた手を放し、赤い瞳でまっすぐにこっちを見てきた。
「おや、素直じゃないか。じゃああたしは帰っていいかい?」
「そう言うわけにもいかないんですよ。おれらんとこのお偉いさんがあなたに目を付けたみたいでね。」
 今度は、金色の髪に碧い瞳を持ち、大槌型のドライバを持った少年が言う。
「あんたらのとこのお偉いさん…って言ったら、あのチャラい輪剣使いか。」
「違う。そのもう一個上だ。」
「もう一個上?」
 ユノが最初に言っていたチャラい輪剣使いというのは、ランスロットという男のことだ。だが、どうやら違うらしい。
 ユノの中に、該当者はいない。
「知らないねぇ。あんたらに上司なんているのかい。」
「一応な。…あんたもともと扉の外の世界の人間なんだ、円卓の騎士の言い伝えくらい知ってんだろ。その、円卓の騎士の雇主とおんなじ名前さ。」
「円卓の騎士の雇主って…まさか、アーサー王かい。扉の外の世界じゃ、どこの国の誰でも一生のうちに一度は必ず耳にする名前さ。そんな名前を持つやつがここにいるって言うのかい。」
「嗚呼。とりあえず、おとなしくついてきてくれ、あの甲斐性なしのことだ、殺しはしないだろう。」
 逆らえば、この常界を支配する彼らのことだ、秘密裏にユノのことを処分しにかかるだろう。
「わかったよ…。ついて行けばいいんだろう、ついて行けば。」
 ユノは仕方なく、円卓の騎士たちについて歩いた。
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