聖なる扉の物語

□初めての気持ち
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ボクがギリシャからここに飛ばされてから、もう何か月たったんだろう。よくわからない。
毎日いろんな動物と戦って、いろんな人と旅をして、はぐれたお兄ちゃんやお姉ちゃんたちを探している間に、何で飛ばされたのか考える時間もなくなってた。
ペルにぃやユノねぇ、心配してないかな。あんまり心配させちゃうと、悪いよなぁ。
それに何より、ギリシャでボクを待ってる、お姉ちゃん…。大好きなお姉ちゃん。はやく会いたいな…。
はやく、帰る道を探さなきゃ…。

町の中を歩いてた。
「お姉ちゃん…?」
ギリシャにいるはずの、ボクのお姉ちゃんが、そこにいた。いつもと違う、白い綺麗なワンピースを着ていて、髪はさらさら伸びていて、いつも縛らないお姉ちゃんには珍しく、綺麗に結んであった。
「お姉ちゃんっ!!なんで、何でここにいるの!?」
走って近寄ったら、お姉ちゃんは不思議そうにこっちを見た。
金色の眼。
ちがう、お姉ちゃんじゃない…。お姉ちゃんは、薄い赤色の目をしてた…。
「っ…ご、めんな、さい…ひとちがい、みたいです…」
こんなに似てるのに…お姉ちゃんじゃない…。

お姉ちゃんに会いたい…

今までずっと、我慢してたのに。
泣かないようにって、一人で何でもできるようにって、我慢してたのに。
「うわぁぁぁん」
泪がたくさん出て、止まらなくって。
地面に座りこんで、ボクは、泣いちゃってた。
こんなところでないたら、お姉さんに迷惑かけちゃうのに、我慢できなくって。
「お姉ちゃん…お姉ちゃんっ」
「ちょ、ちょっと、ぼく?どうしたの?」
お姉さんは困った顔をして、ボクの前にしゃがみこんで、話しかけてきた。
「迷子?どうしよう…」
「おい、オーディン、なにしてる。」
男の人の声がした。
「何してるも何も…みんなを待ってたら、急にこの子が話しかけてきて…泣いちゃったの。どうしよう。」
「迷子か?」
「わかんない。でも、こんな小さな子が一人でいるなんておかしいよね。この世界にこんな子いるの、妖精属たちくらいしか見たことないし…。」
男の人が顔を覗き込んできて、ボクはびっくりして眼をこすった。
黒い髪と赤い目をしている、ペルにぃとおんなしくらいかっこいいお兄さん。でも、怖い顔をしている。
「ああほら、あんたが怖い顔するから、怖くて涙引っ込んじゃった。かわいそー。」
「ちっ…だからガキは嫌いなんだ。」
「…スルト、この子、いったんうちに連れて帰ろう?やっぱり心配だよ。もしかしたら、保護者とはぐれたのかもしれない。」
お姉さんはそういいながら、ボクの頭をぽんぽんと撫でた。
「…そうだな。ヘズのいい遊び相手になるだろうし。」
「そういう意味じゃないって。シグルズとかヘルヴォルとか、ヘグニとかに情報もらおうって言ってんのよ。」
「お姉さん…ボク、大丈夫、一人で帰れるから…。」
「駄目よ!今この世界は危ないことがいっぱいなの。魔界と天界で戦争が始まって、この常界も巻き込まれそうになってる。だから。」
「でも、お姉さんに、迷惑掛けられないもん…。帰らなきゃ。みんなを、探さなきゃだめだもん…。」
お姉さんは、そう言って、くすって笑った。綺麗なお姉さん。ボクのお姉ちゃんより、少しだけ、大きいのかな。
「ぼく、御名前は?」
「…アポだよ。」
「アポ…。そう…。…私はオーディン。宜しくね。」
「おーでぃん…?」
「うん。オーディンでいいよ。ね、一緒に行こう?大丈夫、ちゃんとお友達とか一緒にいた大人の人のところまで連れて行ってあげるから。神様は人間を助けるのが仕事なのよ。」
そう言って、にこって笑うお姉さんは、とってもきれいで、ちょっとしんぞうがどきどきした。
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