ブラックボックスへようこそ。

□01 「邂逅」
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「フラガ大尉。よくあの状況で、援護射撃ができましたね。流石です」
「いや、バズーカを撃ち抜いた一撃のことを言っているなら、俺じゃねぇ」
「は?何を言っているのです。大尉以外の誰が我々を援護するというのですか」
「そう言われても、俺じゃねぇもんは俺じゃねぇしな。第一、射角的に俺の位置からじゃ無理だろ?」
「確かに、あの一撃は正面ではなく、真横から飛んで来たような・・・」
「!?周辺域の索敵、急げ!!」

だんだんと不穏な空気が濃くなる会話に、ナタルは顔を顰め檄を飛ばす。

「出ました。ですが・・・」
「なんだ。どうかしたのか」
「あの、その、と、とにかくモニター映します」

テンポの悪いオペレーターの反応に、クルー達は伺うようにモニターを見やる。
そこに映し出されたのは、あまりにも遠くで明滅を繰り返すポインターだった。

「なっ、あんな所から狙撃したというのか!!」

ブリッジ全体が即座に凍りつく。

「か、拡大!!光学映像映せ!」
「は、はい!!」

トノムラが急いでキーを叩き、映像を解析する。
「あ、あれは!!MS!?それに、あのシルエットは、まるで我々の新型兵器とそっくり」
「し、しかし、Gの製造は我々地球軍だけのはずです!」
「通信、してみるか?」

フラガの提案に、皆がそろって息を呑む。

「ここで言い合っていても意味ないだろ。なら、本人に聞くのが一番だ」
「まぁ、そうですわね。ここからでもギリギリ届くでしょう。回線、開いて」
「あ、はい」

マリューの言葉に、ミリアリアがすぐに回線を開く。
距離が離れているせいか、ノイズの交じりが酷い。あるいは、先ほどまで戦闘をしていたことも影響しているかもしれない。
全員が耳を澄ませる中、ブリッジの扉が開いた。
急な大きな音に、全員がものすごい勢いで振り返る。

「えっ?な、なんですか。あの、僕が何か、、、」

しかし、それも一瞬で、「あぁ、お前か」といった風にモニターに視線を戻す。

「え?な、えぇ?」
「お、来たな、キラ。例の窮地の救世主様だよ。今、回線をつないでるところだ。ただ、ノイズが酷くてな」

フラガがキラの肩に手を回し絡んでくる。当のキラは少しうざったそうに顔を顰めているが、そんなことよりも救世主というのが気になる。あの時、本当に助かったのだ。できれば直接感謝を述べたいと思っていた。
移した視線の先には、黒をベースに所々をいくつかの差し色でカラーリングされたMSが映っていた。

「(あの色には何か意味があるのかな・・・?)」
「そこの黒いMS、応答せよ。黒いMS、応答せよ。こちらは地球連合軍所属、アークエンジェル――」

ナタルが途切れることなく応答を要求するセリフを続けているが、なかなか応答がない。

「先の戦闘では助かりました。せめて感謝の言葉だけでも伝えたいのだけれど」

続けてマリューが優しい口調で感謝をしたい旨を伝える。
しかし、やはり反応はない。

「おい!チャンネルは合っているんだろうな?」
「は、はい。オープン回線ですので、問題ないはずなのですが・・・」

怒り口調のナタルに少し肩をすくめてミリアリアが答えるが、自信がなさ気だ。

『ザ・・・・・・ザザー、―みませ――ノイ―――どくて、よ―聞こ―な――す』
『!!』
「酷いノイズね。やはり遠すぎるのかしら。この艦ならある程度は平気だと思ったのだけれど」
「いえ、ギリギリではありますが、可能範囲内です」

その後も、酷いノイズが繰り返されたが、急に音がクリアになった。
しかし、当の相手はそのことに気づいていないようで、ぶつくさと文句を交えつつ誰かと話しながら機器を操作しているようだ。

『もう!調子悪いなぁ。ノワール、チャンネル合ってるんでしょうね?!』
『疑ウノカ!セレナ、酷イ。傷ツイタ、傷ツイタ!』
『はいはい。勝手に傷ついてていいから、システムチェック急いで!』
『オーボー、オーボー』
『ちょっと、意味分かってて使ってるんでしょうね?まったく、一体どこでそんな言葉覚えて来るんだか』

クリアになった音声と共にモニターに映し出されたのは、どうやらコックピット内の映像のようだ。
見たこともないパイロットスーツを身に纏う、(声の感じからして)女性と思われる人間が映り、その周りを黒い球体のロボットらしきものが忙しなく跳ね回っている。(すぐに無理矢理台座のような所に押し付けられた)
女性陣がその様子を微笑ましげに見ていたことはここだけの秘密だ。

「あ、あの〜」
『へ!?うそ、やだ、映ってるじゃん!ノワール!!!AIの癖に生意気な!す、すみません。お見苦しいところを』

パイロットは恥ずかしげに手で顔をパタパタと扇いでいる。
正面を向いてはいるが、バイザーのせいで顔立ちは良く見えないが、声の様子からするとそれなりに若いことが伺える。
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