ブラックボックスへようこそ。

□01 「邂逅」
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「っう、く。ノワー、ル?」

力なく呟いた名前に、黒い球体がスリープモードから覚醒する。

「オハヨウ、セレナ。オハヨウ、セレナ」

機械的な挨拶が木霊する。

「ここ、は。・・・はっ、そうだトレミーは!!」

急いで計器の確認と、モニターを起動させる。
レーダーを隅々まで見回すが、どこにもトレミーの影はない。
そんなに遠くまで流されてしまったのだろうか。

「・・・ない。どうしよ・・・」
「セレナ、迷子?迷子?」
「そう、だね。迷子になっちゃった。とりあえず、地球を目指そう。あっちかな」

行き先におおよその見当をつけて前へ進む。
立ち止まっている場合じゃない。とにかく前に進まねば。きっとみんな待っている。
帰れると、そう信じて。

暫く進むと、己の知る地球とは少しばかり姿の違う蒼い星が見えた。
地球を取り囲む機動ステーションと、それに連なる機動エレベータが見当たらず、
その代わりに、地球と相対するように砂時計のような形の何かがたくさん浮いている。

「コロニー、なのかな。でも、まだそんな技術は・・・それにどうして機動ステーションがないわけ?ノワール」
「ピピ、ピ。計測不能。現在地不明。周辺惑星、走査。ピコン。太陽系第3惑星、地球。
 ピピピ、ピピ、年代特定、C.E.(コズミック・イラ)71」
「は?こずみっく、いら?何それ。西暦じゃないの!?」
「西暦は70年前ニ廃止、以降新暦、コズミック・イラガ使ワレテイル。人種特定、地球ニ生息、ナチュラル、一部ニコーディネーター。宇宙ノコロニーハ、コーディネーターノ所有。現在、ナチュラル、コーディネーター間ノ戦闘ガ激化――」
「駄目だわ、よく分からない。まるで違う世界ね。・・・違う、世界?」

ノワールは尚もセレナにはよく分からない単語を羅列し、知りもしないニュースや情報を語り続ける。モニターにはコロニーの一つが攻撃される映像が繰り返し流れた。おそらくこの世界の一番の大惨事なのだろう。場合によっては今の戦争激化の原因である可能性もあることも、容易に想像できた。
この優秀なAIが壊れるわけもないし、間違った情報を拾い集めるわけもない。全てが事実なのだろう。しかし、あまりに信じ難いことばかりで、セレナは頭がパンクしそうだった。

「エマージェンシー、エマージェンシー。UNKNOWN UNKNOWN」
「!!?まったく、息つく間もないわね」

ノワールのお経のような情報羅列を聞きながら慣性に任せて浮遊していると、突然けたたましくノワールがアラームを鳴らした。
近くにUnknownの機体を感知したようだ。
すぐにモニターが切り替わり、遥か前方で行われているらしい小さな戦闘場面が映し出された。
映っているのは白いMSが2体のMSに翻弄されている場面と、少し離れた位置の別のMS2体に取り付かれている大きな戦艦だった。
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