笑えや笑え

□き
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ー名無し!あーそぼ!



ー裕介…ごめん今日は…


ーあぁ…じゃぁ俺も行く


ーうん…



ーもう3年か




ーうん



ーもう、いいんじゃねぇの



ー…ううん、お父さんだし


ーそっか



ーーーーーーー






おおうふ、また夢を見た。


会いたいなぁ裕介…



そんな欲ばかりが頭の中を駆け巡ってく



んにしても伊作君だよ伊作君。



天女の話をしたけどやっぱり無視されちゃっていつの間にか別の話題になってた



話したくないのか話しちゃいけないのか…聞くなってことなのかなんなのか



ちきしょー!考えること沢山有りすぎて疲れてきた!!







「失礼します。薬を塗りに来ました」




『あ、はい。どーぞー』




考え事してたら知らない子が二人入ってきた


しかもめっさかわええ…あれ、私なんで女なんだ?




「3年は組三反田数馬です」

「2年い組西川左近です」



『3年A組名無しの名無しです』




なぜか皆学年と組を名乗ってくれるので私も…



「天女様は3年生なんですね落第ですか」



『ちゃうちゃう、私いたの時代では6歳から6年間小学生で12歳から3年間中学生なの。そこからまた3年間高校生ってのがあって、さらにあと四年大学生、または2年短大生ってなってるの。ちなみに中学生までは義務教育だから落第は滅多な事がない限り無いよ。ちなみに私の成績は中の上くらいだった!そこそこ出来るよ!』




「そう、ですか」



うわー、引いてるー?



ってか西川君にめっちゃ無言で見られてるんだけど…もしかして目やにとか鼻くそとか付いてる?


私の話に引いてるの!?何かついてるの?!



『な、に…かな?』



「鼻くそ付いてます」




『うわああああああやっぱりかぁぁぁぁぁぁ!!恥ずかしい!!ごめ、ちょっと待って!!ティッシュ!ティッシュ!?ない!?あれ?マジか!』




「左近…」


「嘘です」



ぴたっ




『え、嘘?』




「嘘です」




『付いてない?』




「付いてます」



『!?』



「嘘です」




『もう!なんなのー?鏡!!鏡どこー!?もー西川君怖すぎ!!』




鞄を漁って見つかった鏡を見てもどこにも鼻くそは付いてませんでした



『こらそこ、笑うなら笑いなさいよ三反田君』



「っクククククク」




私と西川君のやり取りが面白かったのかクスクスと肩を揺らしながら笑う三反田君、西川君はニヤリとしたものの至って平然としてた


なんだよもう!笑いたきゃ笑えよ!!



「薬を塗りますので背中を出してください」



「あぁ、左近、背中はっぷぷ、僕が…っぷ」



『もう三反田君は一度ちゃんと笑った方がいいよ』



「天女様、寝癖付いてます」



『もう騙されないからな』


「ここ跳ねてますよ」



「っぶー!!も、もう辞めてさ、左近」




『三反田君、あなたしばらく笑ってなさいな…寝癖はいいよもう…うん…恥ずかしい』



それから三反田君が笑い終わるまでに薬が塗り終わりましたとさ



どんだけ笑ってんだよ



『ありがとうございました』



「いえ」



『ね、寝癖まで治して頂いて…』



「僕が勝手にやった事ですから」


『西川君はしっかりものですね』


「まぁ、あなたよりは」



『素直だねそーゆー子好きです』



「僕も天女様のこと結構好きです」



『結婚してください』



「お断りします」



『…』


「…」



「…」









「…ッブファ!!!」



『あ、三反田君負けー』


「数馬先輩弱すぎです」


「寧ろなんでお前平気なんだよ!!」



『ふふ、ありがとございます二人とも』



「保険委員なんで」



『西川君が可愛すぎて辛い』



「良く言われます」




『正直者だねーそーゆーとこ好きです』



「天女様の馬鹿っぽいとこ僕も好きです」



『結婚してください』



「お断りします」




「も、もー勘弁してー!!」




このやり取りを三回位したら鶴町君が来てご飯になりました。


鶴町君曰く一年は組は今日は校外学習で一日おらず伊作君は休みのためこの三人が来てくれたのだとか



至れり尽くせりで幸せです。



「今日は僕らろ組が来ますねー」


『あいよ!ちゃんと先生に言ってくるんだよ?』



「はーい」



「一年い組も来たいそうですけどどうしますか?」



『そちらにおまかせします』




「じゃぁ先にろ組で後からい組でお願いしまーす」



『あいー』



「2年は明日来ます」



『先生に言ってくるんだよ?』


「はい」



「3年は金曜日にテストがあるので来週お願いします」



『はーい。ってかいつまでここに居ていいんだろう』



「ずーっと居てくださーい」



『鶴町君の為なら!と言いたいところだけど…いつ帰れるのかしらねぇ』



「…やっぱり帰りたいんですね」



『んー、向こうにやらなきゃいけないこと沢山残して来ちゃったからねー…』



委員会の引き継ぎとか受験の事とかおばーちゃんの事とか…お墓とか



…裕介とか



まだまだやらなきゃいけないこと沢山有りすぎて死ねないな…




「名無しのさん」



『うぇ!?いきなり天女から名字!?いいけど!』



「僕、あなたの事結構好きですよ。先輩を取らないし変なことばかりするし」



『西川君の愛が痛い』



「それに結構薬使ってるんですよ」



『あー…だよねー…』



「居なくなるならせめて恩を返してから居なくなってくださいね」





恩を返す





そうか、そうだよね




皆を笑わせる事だけしかやらないなんておかしいよね?


薬だってタダじゃない。ご飯代だってこの着物みたいなやつだってタダじゃないんだ。




「だからまずは自分の足で食堂に行けるくらい回復してください」




「それまで僕らはお手伝いしまーす」




ここの子達は皆優しいなぁ



暖かい




『リハビリ、頑張ります!』



食事が終わって三人が帰る時、三反田君がこっそり


「本当は名無しのさんの薬代は学園長先生から臨時予算で頂いてて…その、少しだけ医務室で使ったりしてるんです。だから僕らにはあまり恩は感じなくても大丈夫です」


と教えてくれた。


それでも…



『それでも保険委員の皆が私の体に塗ってくれてる分の人件費には程遠いよ』



そもそも学園の予算であって私の得にしかなってないことなんだから



考えるのは当たり前




『ありがと三反田くん、お陰で気持ちが軽くなった!』





命を助けて貰った恩の代償ってどのくらいなのかな


…わからん







後で誰か…あ、先生に聞いてみよう。






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