笑えや笑え

□く
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ーなぁ名無し



ーな、なにお父さん



ーお前は綺麗だな


ーえ?



ー母さんそっくりだ




ーっ、お父さん?



ーまるで出会った頃の綺麗な母さんだ



ー嫌!やめて、やめて!お父さん!!



ーミツ…



違う、違うよ!私はお母さんじゃない!!やめて!やめて!痛い!痛いよ!お父さん!




ーーーーーーーーー




『っは!…はぁはぁはぁ…はぁー夢かぁびびったぁ』




ここ最近、忘れかけていた夢をよく見る


それは私が6歳の時の夢だったり最近の夢だったり



時間はまちまちだし確実に傷を抉ってきたり優しく癒したり…


感情が不安定で辛い


怪我の痛みより夢の方が数倍キツい



新野先生に相談してみようかな、悪夢を見なくて、むしろ夢を見ないくらい熟睡できる薬みたいなのが有るかもしれない



いや、体が痛むからずっとこんな夢ばかり見るのかな?

寝てても疲れが殆ど取れてない、裕介と出会ってからこんなことなかったのに



…あぁ離れたからか、考えてないフリして依存してたんだな私


裕介…今頃なにしてんのかな




『はぁー…ったく誰だよお前がどっか行っても探せる自信あるとかほざいてた奴、全然来ねぇーじゃん。…バカ裕介』




はぁーしんどい



いっそ死んでしまえば楽になるのにな




「ほんとにそう思ってる?」



『そらそうでしょ、ここにいたら迷惑かけてるだけだし痛いし苦いし』



「迷惑?」



『保険委員の人とか、薬代だってタダじゃないし』



「まぁ、たしかにね」



『だいたい私は助けてなんて言ってないのに乙女が…いや、それはダメだな…食満君だって助けたくなんて無かったのにそれ言ったらダメだ』



「そうかもね、でもそうじゃなかったら?」




『いやいや、絶対助けたくなかったで…ん?…わたし、誰と話してるんだ?』




「4年い組綾部喜八郎でーす」




…!?




い、いつから!?


全然気付かなかった!!!ビックリしたぁ!!!!



「ゆうすけ、って誰?」



『ぅえ?!あ、えっと、親友と言うか心の友っていうか恋人ではないけど愛してる人と言うか…ってか君何しにここに来たの?』



「好いてる人?」



『いや、うーん…ラブかライクかって言うとラブなんだけど』



「らぶ?らいく?」



『愛か友愛かって言われたら愛してるんだけど…うーん…付き合いたいとか結婚したいとかではないと言うか』



「家族、兄妹的な?」



『そう!それ!弟みたいな!ほっとけないし大好きだけど踏み込める訳じゃない的な!』



「ふーん」




『っは!嘘でも恋人っていっときゃ天女うんぬん言われなかったんじゃね?!』



「そうだね、それ期待してた」



『うわー!へたこいたー!でもそんなの関係ねぇ立場わ変わらねぇ!』



「なにそのポーズ」



『数年前に流行ったギャグ』



「ふーん」



『面白い?』



「全然、変な人」



『だよね、私もそう思う』



「前に来た天女は全員僕の掘った蛸壺に落ちてるんですよ」



『話の流れよ』




「なのに今回の天女は1ヶ月も立つのに落ちないなぁと」




『ごめん、蛸壺って漁で使うアレよね?』



「おかしいなぁって思って来ましたー」



『っあ、察した、君今冒頭の質問に答えてくれたのね?意外と素直ね』



「なのでー落ちてくださーい」




『え?壺に?壺に?どうやって落ち、え?』




やべ、この子の攻略法が解らない!どうしよう!取り敢えずアレか?



蛸壺に落ちる?


→落る

断る

逃げる


みたいな展開?



なら答えは一つ




『オーケー、落ちる。でもタダじゃ落ちないよ』



「…キリ丸みたいな事言うね」



『摂津君ね、彼は凄いよあの年でこの世の核心を知ってるんだから。
なので、私が蛸壺とやらに落ちる代わりに教えてほしいことがありまーす』



「質問によりまーす」


『おっけ、じゃぁ質問、3人の天女の事教えて』



「…それ、先輩方から聞いてないんですか?」


『超絶美少女の我が儘ちゃん大暴れってのは聞いたけど聞きたいのはそこじゃないの、私が聞きたいのは




どうやって天に帰ったかってこと』




今まで疑問だった


私の持つ天女の情報は未来から来たこと。美少女だったこと。この学園を知っていたこと。まぁまぁの男好きだったこと。学園から笑顔を奪ったこと。そのくらいだ


でも私がくる前には皆居なくなってるわけで


帰ったのか、他のところに連れていかれたのか、死んだのかはわからないけど


ここに居ないのは事実でどうやってそうなったのかが解らない


これでもちょっと記憶力はいい方だから誰かが私の意識があるなかでそんな事をポロっと言ってたら覚えているはず


だから口を閉ざしてるか言い忘れてるかになる。



綾部君からその話が聞き出せれば此処から出る、又は帰れる方法が解るかもしれない
わからなくてもヒントにはなると思う



さぁ、君にとって蛸壺はこの質問に答えるに値するのか




「いいよ」



『え、まじで?』



「ええ、僕の蛸壺に落ちてくれるんですよね?」




『お、おう』



「じゃぁ教えます。天女が消えた理由は「喜八郎うううううううううううううう!!!!!」です」





『は?』




スパーン


「喜八郎!!お前朝から何処に行ってるかと思えば!!天女のところに!!おおっと、私としたことが…おはようございます天女様、私、4年い組の容姿端麗才色兼備の平滝夜叉丸と申します。この度は早朝から同室の綾部が大変失礼致しました、私としたことが朝の支度に手間取って…いえ、この滝夜叉丸、手間取って等おりません!何故なら私は忍術学園一の秀才でありましてぐだくだ」



な、なんかすげー奴来た


スパーンって障子を開けたかと思えばどえらい濃い人入ってきた


立花くんが非じゃないくらい自分大好きな人


スゲーよノンストップで自分の事こんなに話せるなんて、しかも長所ばっかり



もうなんかスゲーしか出てこないよ

パワーが違うパワーが


なんつーかキラキラってかギラギラってか薔薇?薔薇薔薇って感じ


やべーすげー


ちらっと綾部君見たけどこっちは立花くんそっくりだ

つーんってしてる。寧ろ目線の先に蟻でも見つけたの?って感じ

どこ吹く風かどころかどこ行く蟻さんくらいな感じだ

いっそ爽やかだよ



取り敢えず平君の話を聞きつつ適当な相づちを打ってるけどやっぱり彼はすげーよ




おう、すげーな、まじかよ、やべーな



この4語くらいを使ってひたすら聞くだけ



「なので…おっと、お話はこのくらいにして…さぁ喜八郎部屋に戻るぞ」




あ、終わった



いやいやいやいや、綾部君の話しまだちゃんと聞けてない!!!



連れてかれちゃ困る!!




「あ、終わったの?」



「終わるわけなかろう!この私がどれだけ素晴らしいか語り足りない!」



『まだ出るの?!凄いな君…寧ろ終わるまで聞いてたいよ…いや、でもね今大事な話してたから、肝心なところが君の美声で聞こえなかったから
ごめん、綾部君もういっか「なんで?滝の自慢話つまんなくない?それより穴掘ろうよ、楽しいよ」ちょ、おま…



っは!蛸壺って穴か!地面の!!なるほど落とし穴みたいなやつか!』


じゃなくて!あーもー!肝心なところが聞きたいのに!


でも説明もしたい!!



「喜八郎!!自慢話とはなんだ!!私の話は『平君の話はつまらなくないよ、自分の長所を沢山知ってるっ人ってのはさ、強くて頼られる人の象徴だよ。一番上に立つ人は大体自分の良いところはこんなところですよーって自己アピールしてる。ああ、あの人はそんな強さが有るなら付いていこう!ってなるじゃん?だから平君、凄いな強いんだなって思った』…」




滝君はただ純粋に凄い人なんだなって思った。

それだけの自信を付けるためにどれだけ頑張ったのかどれだけ練習したのか


私なんてそこそこ出来るけど秀でて出来るものなんかないし

あ、暗算と速読は得意だけど

自慢できるかって言われるともっと凄い人知っちゃってるし無理。



『自分には出来ないことが出来る人ってのは尊敬する。例外も有るけど滝君の自慢は間違いなく尊敬する。
まぁ確かに昔の武勇伝をいつまでも語ってくる人は嫌われがちだけどね?頑張ってるんですじゃなくて、私はこれだけ優秀ですなんて中々聞けるもんじゃないからね』



「…良かったね滝」



「…っ!!!…っふ、天女様は私のファンでしたか!ならば後日また改めてお伺いさせて頂きます!では!!」




『あ、あれ?』



行くの?

あれ?綾部君迎えに来たんじゃ…


あれ?



「滝はね、前の天女に自慢話ばかりしてると回りから誰も居なくなるよって言われたんだ」



『なんだそれ、余計なお世話じゃん』



ったく我が儘フェアリー天女めろくなことしねぇな…


「だから嬉しかったんだと思うよ、尊敬するって言ったの」



『そっか、私が言ったのが我が儘フェアリー天女の尻を拭えたなら良かったかな…

おっと、平君パワーかな?ちょっと前向き!へへ、得しちゃったな』



「ねぇ、動けるの?」



『え、今?うん、もう歩けるよ。走れないけど』



「じゃぁ来て」



『うぇ!?いや、私トイレ以外でここ出ちゃダメだから』



「良いって言ってる」



『誰が!?何処で!?ねぇ、綾部君!!』




なんだかよくわからないけど

いや、解らないことだらけだけど



こちらに来て初めて触れた手はちょっぴり堅くてたくましい手だった



『あるく!!歩くから!!引っ張んないで!!!』



後強引、この学園ドS多すぎなんですけど!!




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