笑えや笑え
□う
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伊作視点
『あ、えーっと…同情を誘う作戦、とかだったらどうします?(やっべー!男の子泣かせてしまった!!どうしよう!!どうしよう!!)』
彼女は一体何なんだろう
『ほら、何かそんな感じで…ね?(く、苦しい!苦しすぎる!言い訳下手すぎ!)』
体を見れば大体わかる。この子は拷問を受けてきた体だ
山賊につけられた背中や腕の生々しい切り傷よりはるかに古い
『ま、まぁあの、あれです。処女じゃないし!失うものも無かったですし!(ほらほら泣かないでー!)』
小さくて丸いやけどの後が腕に二ヶ所、脇腹の切り傷
『だ、だから、あの、泣かれると困るって言うか…その、全然いたくねぇし!よゆーよゆー!いてて…やっぱいたいけど…でもほら!大丈夫!生きてるし!(焦って何いってるかわからん!!)』
前の天女より美人ではない
でも華奢で色白で可愛らしい顔立ち
それに似合わない怪我の量は明らかに前の天女とは違う
『あー…あ!見て!ほら!立てる立てる!名無しが立ったぁ!みたいな!ね?大丈夫だから!(ほーらクラ◯がたったよー◯ター)』
僕は保険委員会委員長だ
医者ではないが僕にはわかる
この古傷も今回のキズも
「なにしてんだ!」
『!?いったぁー!やっぱ無理!うぉおおおいたいいいいい(ひぃぃぃぃぃだれかきた!!傷口!傷口押さえてーる!!!)』
「伊作!お前泣いてる場合か!!早く見ろ!」
故意につけられた悪意の傷だ
「っち、もう妖術か」
『あああああああああ!(痛い痛い痛い!!)』
「うるせぇ!お前なんか助けなければ!!」
違うよ留さん
僕間違えてたんだ
『お前が傷口掴んでんだよ!!!痛い痛い!!!やめろ!』
「黙れ!俺が助けてやった命だ!静かにしろ!」
『助けてくれてあさーしたああああああああ!!頼んでねぇーけどおおおおお!死ぬ死ぬ!お前が助けた命が痛みで死ぬってのぉぉぉぉ!!(頼んでねーけどおおおおおお)』
「とめ、さん、離してあげて」
天女がすべて平和で、何からも守られてた甘くて理想的な時代から来たって
「っ、」
『はぁ、はぁ、はぁ、じぬがとおもった…』
踞って傷口をさすり続ける彼女を見て僕は確信した
あぁ、僕がこの子に抱く感情は
「留さん、僕妖術にかかってないよ」
「ほんとか!?」
「うん、この人は」
『帰りたい…帰りたいよぉ』
あんなに痛い痛いって騒いでいたのに涙ひとつ流さないこの子は…
いや、多分涙が出ないんだろう
あぁ、なんて
「可哀想な子だ」
。