夢小説

□another story
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ルーナside 

あれは、何年前の出来事だったかな。
今日と同じでとても寒かったことを覚えてる。



エルヴィンの調査兵団入団が決まった日の夜。
私はエルヴィンに会えるかな、と誘ってみた。
エルヴィンは嬉しそうに笑ってくれた。
誰も居ない町の片隅。
そこは私とエルヴィンの秘密の場所だった。
私がエルヴィンに好きだよと伝えたのもここだった。
真っ暗の中にエルヴィンの靴の音が響いた。
「待たせたかな? 」
走ってきたエルヴィンに私は笑顔で言った。
「ううん。大丈夫だよ」
「どうしたの? ルーナから呼ばれるとは思わなかったよ」
ふざけておどけてように言ったエルヴィンに私は悲しくなってしまった。
「エルヴィンが、調査兵団になるって……本当? 」
エルヴィンの顔を見ているつもりなのに私の目は、微妙にエルヴィンから逸れていた。
言わなきゃ。
エルヴィンは何て言うかな。
そんな不安の中、私はゆっくりと口を開いた。
「私は、エルヴィンを支えられるほど強くない。
 だから、傷つくエルヴィンを、見るのが辛いの。
 ごめんなさい」
言っちゃった。
目がだんだんと熱くなって、視界がぼやける。
「わかった」
エルヴィンは私に理由を聞かなかった。
それは、エルヴィンの最後の私への優しさだったのかな。
思えば思うほど、込み上げてくる涙は抑えられなかった。

それから、しばらくのエルヴィンにとっての初めての璧外調査。
多くの兵士たちが亡くなったみたいだ。
エルヴィンは。
悲しい顔してるのかな、辛い顔してるのかな。
生きてるのかな。
帰還した調査兵団はまるで正気を無くしてしまったように思えた。
その中に私は見つけた。
「エルヴィン……」
よかった。
私はそっと人混みを抜けてその場を離れた。
とても嬉しかった。
「よかった……」
本当に安心した。



それから何度も何度も璧外調査があった。
その度に私はエルヴィンを見に行った。
エルヴィンが生きている、それだけで私は良かった。

私は結婚することになった。
無理やりではない。
お互いに愛し合っている人との結婚。
その前に、エルヴィンにどうしても伝えたいことがあった。
私は家の近くの丘でクローバーを摘んだ。
それで、私は花輪を作った。
前にある本で読んだから。
クローバーの花言葉は『私を忘れないで』。
そして、短い短い手紙を書いた。
『昔も今も、ずっと応援しています』。
贈り物の箱にはわざと私の名前は書かなかった。
名前を書いたら、あの日の前に戻りたいと思ってしまいそうだから。
それに、エルヴィンはきっとわかってくれると思うな。

それから暫くして、私は夫と食事処を始めた。
町でも、まぁまぁ有名になって、繁盛している。
毎日がとても楽しかった。

エルヴィンにあの贈り物は届いたかな。
エルヴィンはあの意味わかってくれたかな。

「奥さん」
お客さんが私を呼んだ。
「はーい」
「ランチセットお願いね」
お店おすすめのランチセットは皆に人気がある。
「そういえば、今度、調査兵団の団長さんが来るみたいだね」
張り切らないとねと笑うお客さん。
エルヴィン、わかってくれたみたい。
私はそう思った。

離れていても、私はエルヴィンを一番応援している。
エルヴィンが私に強くなることを教えてくれた。
私はそう思う。

私は待っていなきゃいけない人がいるから、毎日頑張れるんだ。












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