夢小説

□あの日の答え
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エルヴィンside 

あれは、何年前の出来事だったかな。
今日と同じでとても寒かったことを覚えてるな。



調査兵団入団が決まった日の夜。
俺はルーナに会えるかな、と誘われた。
緊張しきっていた俺にとってそれはとても嬉しかった。
誰も居ない町の片隅。
そこは俺とルーナの秘密の場所だった。
彼女が俺に好きだと言ってくれたのもここだった。
真っ暗の中にルーナの赤いスカートが見えた。
「待たせたかな? 」
駆け寄った俺に彼女がいつもの可愛い笑顔を向けた。
「ううん。大丈夫だよ」
「どうしたの? ルーナから呼ばれるとは思わなかったよ」
ふざけておどけて見せた俺にルーナは悲しそうな顔をした。
「エルヴィンが、調査兵団になるって……本当? 」
俺の顔を見ているかのように見えるルーナの目は、微妙に俺から逸れていた。
そのとき、気づいてしまった。
彼女が今から俺に伝えようとしていることを。
そんな俺の不安の中、彼女は口を開いた。
「私は、エルヴィンを支えられるほど強くない。
 だから、傷つくエルヴィンを、見るのが辛いの。
 ごめんなさい」
まさか、本当に。
目がカラカラになるほど、ずっと目を見開いていた。
「わかった」
俺はルーナに理由を聞かなかった。
本当は、聞けなかった。
それほど、俺は唖然としてしまっていた。

それから、しばらくの初めての璧外調査。
多くの先輩兵士が亡くなった。
俺は何とか生きて壁の中に戻ってくることができた。
でも、友達も失くしてしまい、俺の生きる意味が見つけられなくなってしまっていた。
帰還した調査兵団を好奇の目で見る町の人混み。
その中に俺は見つけた。
「ルーナ……」
でも、そこに彼女の姿はなかった。
見間違い。
そうは思いたくなかった。
「心配、してくれたのか……」
どうしても、そう思いたかった。



それから何度も何度も璧外調査があった。
その度にルーナを見かけているような気がする。
ルーナを見つけると次の瞬きの一瞬で彼女はいなくなっている。

「団長、団長宛に届け物があります」
そう言って、男兵士が私の机の上に小包を置いていった。
「ありがとう」
両手より少し大きいくらいの正方形の箱。
茶色の包装紙に包まれたそれはリボンも何もかけられていない。
ただ、『エルヴィン・スミス様』とだけ、綺麗な整った字で書いてある。
どこかで見覚えのあるその文字。
箱を開けると、クローバーで作った手の平サイズの小さな花輪が入ってた。
「これは……」
花輪と一緒に入っていた小さな白い紙。
『昔も今も、ずっと応援しています』

それから暫くして、ルーナが結婚しているということを知った。
町に夫婦でやっている新しい食事処ができたらしい。
そこでルーナが働いているみたいだ。

ルーナにきっと間違いないあの贈り物。
あの意味はなんだったんだろうか。

トントン。
「入るよー」
俺の返事も待たずに団長室に入って来たのはハンジ。
入ってくるなり、ハンジは俺の机に飾ってあるあの花輪を手にとった。
「なになにー、どっかの女の子にでも貰ったの? 」
意味深な笑顔のハンジに驚いてしまった。
「なんで、わかるんだ? 」
「えっ!? うーん。花言葉が『私を忘れないで』だから? 」
私を忘れないで。

離れていても、ルーナは俺の生きる意味になろうとしてくれていなのかもしれない。
私は勝手に、そう思うことにした。

私は待っていてくれる人がいるから、私は帰らなければと思えるんだ。












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