夢小説

□この場所で。
1ページ/1ページ





 紙上を走らせていたペンを止める。
手元を照らす太陽を見て思った。
「いい天気……」
口に出すと改めて思うな。
もう冬なのに今日はとっても暖かい。
「いるかな、分隊長……」

 二週間くらい前、外をふらふら歩いていた私は見つけた。
草の上に横になるミケ分隊長。
ずっと片想いしていた分隊長。
嬉しくて、それからいつもあの場所を見に行ってしまう。
毎日、あの場所に行っているとあることがわかった。
よく晴れた日の昼休みにあの場所にいること。
分隊長があの場所で昼寝をしていることを私しか知らないこと。
分隊長を探し回る先輩兵士達をよく見かけるから、そうだと思う。
私しか知らないと思うとなんだか分隊長と二人だけの秘密みたいでドキドキする。

 今日もあの場所に来てみた。
でも、分隊長の姿はなかった。
今日は来ないのかな。
その場に腰を下ろそうとした。
「わっ!! 」
肩に置かれた大きな手に情けない声が出た。
「えっ!? 分隊長? 」
私が隠れて待っていた張本人、ミケ分隊長だった。
目を白黒させる私に分隊長が言った。
「俺を待っていたんじゃないか? 」
「えっ!? 何で知って――あっ! 」
慌てて口を塞いだがもう遅い。
「俺も毎日ここでお前を待っていた。
 木の向こうで笑っているお前を見るのが好きだった」
淡々と話す分隊長。
「気づいてたんですか? 」
顔から火が出るほど恥ずかしい。
「ああ。ずっと前からな」
ふわりと香る甘いにおい。
抱きしめてくれた大きな手から優しさが溢れている。

 また明日も、この場所で。

そう呟いた分隊長は、エルヴィンに呼ばれていると走って戻っていった。
暖かな冬の太陽が笑っているように見えた。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ