夢小説

□僕。
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僕のこと、どう思う――。
街の人達の話声。
駆けまわる兵士の足音。
それらがまるでオーケストラが奏でる音楽かのように、私は聞き入っている。
どれくらいの沈黙の後だろう。
アルミンがもう一度私に聞いた。
「僕のこと、どう思う? 」
アルミンの青色の瞳に夕日が輝きを付け加える。
太陽なんて早く壁の向こうに消えちゃえばいいのに。
半分壁に消えかけている太陽に目を細める。
「どういう意味? 」
本当は知っている。
アルミンがどういう気持ちで私に聞いているかを。
隣に腰かけているアルミンを見る。
でも、多分アルミンは気づいている。
私の目がアルミンに向いていないことに。
ずっと奥のジャンに向いている私の目に。
「ねぇ、ルーナ。ジャンなんて、もうやめちゃいなよ」
その言葉は何回目かな。
わかってるよ。
ジャンがミカサのこと好きなことくらい。
みんなが知ってる。
私はそんなに馬鹿じゃない。
「僕はルーナのこと好きだよ。僕はルーナに悲しい思いなんて絶対にさせない」
僕、僕、僕――。
僕は、ってまるでジャンは違うよって言ってるよね。
悪魔の囁きがどんなに優しい振りをしても、私の心に刺さるとげの大きさも太さも変わらないのに。
アルミンはきっとわかってる。
私が傷ついていること。
「ねぇ、僕のこと、どう思う? 」

私とアルミンはずっと交わらない平行線上に立っていると思う。
ごめんね。
どこかにアルミンのこと好きになりたい私はいるんだけどね。

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