夢小説

□言葉なんてなくても。
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言葉なんてなくても。


 今日は待ちに待ったアルミンも誕生日だ。
ずっと、ずっと楽しみにしていた日。
そして、朝からずっと考えている日。
「アルミン。お誕生日、おめでとう――えっと……」
アルミンに伝えなきゃいけないことたくさんある。
でも、なかなか言葉がまとまらない。
ありきたりな言葉しか浮かばない。
アルミンに特別を伝えたいのに。
それを伝えるための言葉は私の頭には入っていない。
いや、少しはあるけど、アルミンにとってはそんなことだと思う。
アルミンも思いつかないような特別な言葉で私の特別を伝えたい。
「おめでとう、いつも……」
だめだ。
自分の不甲斐なさに涙が出そうになるのを必死で抑える。
今日は泣いたらいけない。
そう自分に言い聞かせるけど、何もできない自分に怒りが込み上げてくる。
「いつも、ありがとう――じゃなくて……
 アルミンの笑顔――ああ! 」
まとまらない。

 「あっ! ルーナ! こんなところに居たんだ。
 探したんだよ? 」
後ろから私を呼んだ声の持ち主はもちろんアルミンだった。
「アルミン……」
「どうしたの? 元気ないね……」
眉を下げるアルミン。
だめだ。
アルミン、今日はそんな顔しないで。
「ううん。そんなことないよ。元気だよ」
笑顔つくれてるかな。
頬が引きつるのは気のせいではないと思う。
「そう? それなら、いいけど。
 そうだ! 今日は、何の日だ? 」
悪戯っぽく笑うアルミン。
いつも見せてくれる笑顔と違うから少しドキッとしてしまう。
「アルミン……の、誕生日」
ごめんね、何にも準備できてないんだ。
言葉尻が小さくなっていることに気づいた。
「――よかった! ちゃんと覚えててくれたんだね! 」
そう言って嬉しそうに笑うアルミン。
アルミンの笑顔は魔法みたい。
いままで落ち込んでた気持ちなんか吹っ飛んじゃうよ。
今度はちゃんと笑えてるよね。
「うん! あたりまえだよ」
「じゃあ、ルーナには今日一日僕に付き合ってもらおうかな? 」
アルミンは今日、お休みだよねと私に確認してから、私の手をとって走り出した。
「えっ!? ちょ、ちょっと、アルミン!? 」
戸惑う私にあたりまえとでも言うようにアルミンが言った。
「せっかくの誕生日なんだよ。これくらいのわがままはいいでしょ? 」

 特別な言葉なんていらないよ。
Happy birthday
それだけでいい。
君が僕の隣に居てくれる。
それだけで、僕の毎日は特別なものになるから。
これからも、ずっと僕の傍にいてね。
これからも、ずっと笑っていててね。
ねっ! ルーナ


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